連合(アライアンス)が中小企業の、さらには日本の文化・伝統の持続へ〜川邊事務所会長・川邊康晴氏に訊く(4)
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「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が全会一致で採択された2015年9月の国連サミッ トから、今月でちょうど丸6年。そこに掲げられた17の「ゴール」および169の「ターゲット」、いわゆる「SDGs」(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)に沿って、各国では様々な取り組みが進んでいるようだ。
(聞き手:(株)データ・マックス 代表取締役 児玉 直)
持続可能性の秘訣は「傍楽(はたらく)」
このようにして、川邊氏は60年以上にわたる長いビジネス人生を通じ、会社というものを持続させるための「戦略」を提供・実践し続けてきた。近年のモットーは「傍楽(はたらく)」。「傍」らの人を「楽」にする=喜ばせることをやれば自ずと商売は繁盛し続くという、江戸商人の心構えにある言葉だそうだ。「体力もない老人の私が働くというのは、これが一番しっくりきます。パラリンピックのマラソンランナーの伴走者のように、社長さんと一緒に走っていこうといって、それを私がやるのがいいのか、私よりも優れた人を紹介するのがいいのかという発想ですね」。
だが、そもそもなぜ会社は持続しなければならないか。それは、「ステークホルダー」の生活を守らなければならないからだという。「倒産したら、社長本人はもちろん、家族も社員も株主も、時に何万人もの人々を路頭に迷わせることになる」。だからこそ「持続可能性の高い企業づくりをすることは社長の使命」であると。では、そのためにはどうすればよいのか。川邊氏は、「それが一番難しい。会社を作ることも難しいが、それを持続させることはもっと難しい」としながら、次のように商売というものの「根本」を見つめ直すことの重要性を訴える。
「持続するためには必ず収益を上げなければならない。でもそれは、どれだけの収益を上げればいいかといった問題ではないと私は思うんですね。商売はお客さんに喜んでもらうものを提供するから成り立つもの。いらないものを押し売りするのとは全然違う。マーケットが欲しがっているものを見つけてくる。たとえそれが自分では作れないものでも、探してきてでも提供する。その考えを常に持っていれば、商売は自ずと続くものです」。
この言葉はまた、SDGsの進められ方が果たして真にその根本理念に合致するものか、一度立ち止まって考えるよう我々を促すものだ。SDGsに則した取り組みをしていることは、企業価値の向上やブランディングといった面でその企業に大きな収益をもたらす。だが、それ自体が目的化し、実際は環境保全にも経済格差解消にも寄与していないという「SDGsウォッシュ」が大きな問題となっている。政府もしかり。菅前政権はSDGsを推奨するかたわら、中小企業基本法改正を押し進め、「日本の低生産性をもたらしているのは中小企業」(デービッド・アトキンソン)という観点から中小企業の淘汰、あるいは大企業による合併・吸収をますます加速させようとしてきた。これは、多様なるものの共存から豊かなものが生まれ、それが社会が持続するための動力となるという考えに立脚するSDGsと、根本的に矛盾する発想とはいえまいか。
日本において中小企業は企業数にして全体の99.7%、従業員数では66.8%を占めると言われる。大企業の傘下にどんどん入れていけば生産性が上がるというのは、あまりに乱暴な考え方であろう。というのも、日本の産業も雇用も、技術も文化も伝統も、これまでそれを担ってきたのは中小企業だったからだ。この観点からして、各々が自身の「コア・コンピタンス」を意識し、互いに自律性と自主性を保ちながらその力を結集して時代に臨むという川邊氏の「アライアンス型経営」は、中小企業の生き残り戦略という意味合いを超えて、日本の技術や文化の持続可能性にとっての羅針盤であるとすら言えないだろうか。
(了)
【文・構成:黒川 晶】
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