アフガニスタンレポート これからが本当の国づくり(中)
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「Web Afghan in JAPAN」 編集長 野口 壽一 氏
米軍が完全撤退したアフガニスタン。タリバン政権の下、アフガニスタンはどのような方向へと進むのだろうか。現地の状況に精通している「Web Afghan in JAPAN」編集長・野口壽一氏に寄稿してもらった。
タリバンと反タリバン
そして8月15日、イスラム主義を掲げた武装集団タリバンが首都カブールに入城し、再び全土を支配するに至りました。8月末までには、アメリカは協力者を残したままアメリカ人兵士をすべて撤退させました。40年戦争は終わりました。終わったように見えますが本当にそうなのでしょうか。
外国軍が撤退してタリバンが全土を掌握した現在、アフガニスタン国民に社会福祉やサービスが行き渡り、幸せになれるのでしょうか。今すぐそうなれないとしても、タリバン政権の下でそうなる展望が開けるのでしょうか。
タリバンは、コーランの教えやシャリーア法(イスラムの教えに則った法)の実行を通して、イスラムの本義に立ち返ることにより人は幸せになれると信じる集団です。
タリバンが前回権力を握った96年以降に取った措置は、恐怖(テロ)による人心掌握でした。イスラム戒律の強制による音楽や映像の禁止、インターネットの制限など社会生活の制限、女性に対する男性の付き添いなしでの外出禁止や外出時における全身を覆うブルカの着用の強制、女子校の閉鎖など女性への差別と抑圧、残虐な刑罰などです。今後、このような措置が復活する恐れがあります。さらに、タリバンのベースとなる民族はパシュトゥーン人です。厳格な女性隔離(我々から見れば差別抑圧)は、イスラム教によって脚色されたタリバンをタリバンたらしめるアフガンの特色をもった習俗です。それを変えるとパシュトゥーン人でなくなってしまいます。
さらに、タリバンが権力を維持していくためには国民の支持が必要です。イデオロギーでは腹は膨れません。人は病気にもなります。知恵もつけなければならないし、気晴らしもしないと生きていけません。国政を担当することになれば、このような国民の要求を前にしてタリバンは変わるのでしょうか。
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【中村医師追悼企画】活動する場所は違えども 先生のご遺志を継いでいきたい―(前)イスラム教のシャリーア法は曖昧であり、その時々のイスラム政権によって自分たちの政策や統治に有利なように、いかようにも解釈されます。イスラム国にもいろいろあります。アラブ人の国サウジアラビアやUAE(アラブ首長国連邦)など厳格な女性隔離政策をとっているイスラム国があります。パシュトゥーン人に人種的に近いイラン・イスラム共和国では女性隔離も地方によっていろいろで、選挙制度もあり大統領も選挙で選びます。パキスタンもそうです。トルコや中央アジアのイスラム国のように、イスラム教の世俗化をはたした国もあります。タリバンは西側諸国に認められ、真剣に相手にしてもらうことを望んでいます。
カブール入城直後の記者会見などを見ていると、ずる賢く立ち回ろうとする姿勢も見て取れます。世界に向けて寛容さを印象づけようとしている気配もあります。しばらくすれば、状況によっては選挙を行うと言い出すかもしれません。しかし、彼らのイスラム原理主義政権の本質は変わらないでしょう。もし変わったら、もうタリバンではないわけですから。
そのことを最も鋭く見抜いているのは女性たちです。タリバンがカブールに入った翌日、カブールの壁に次のような抗議の声、女性たちの決意が書かれました。
「くたばれタリバン!今や女性は政治的に目覚めた。20年前には疑問をもっていなかったブルカの下での暮らしはもはや望んでいない。安全にいられるための賢いやり方を探しながら我々は戦い続ける」。
デモを行い、スマホで写真や動画を撮影し、自分と家族の生活を守りながら、自分たちの主張を世界中に配信しています。
(つづく)
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