【福島原発事故】徹底解説・ALPS処理水の海洋放出問題(前)
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福島自然環境研究室 千葉 茂樹
2021年10月2日、宮城県保険医協会で2時間の講演を行った。その際の資料を再編集して一部をここに提示する。
ALPS処理水の海洋放出に関する私の提案~前回よりも具体的に
初めに申し上げておくが、私は東京電力福島第一原子力発電所でたまり続ける「燃料デブリを冷却した汚染水を外部へ放出するのは反対」である。
しかし、現実問題として汚染水はたまり続け、タンクは1000基を超え、さらにそのタンクも多くは耐久年数を超えている。基本的に東京電力の「甘い見通し」「自分に都合の良い判断」がこのような状態を招いているのであるが、目の前に壊れそうなタンクがある以上、現実的な対応を考えなければならない。理想論では、問題は解決しない。最も現実的なのは、汚染水の太平洋への放出である。これについては前回記事を見ていただきたい。
簡単に解説すると、燃料デブリを冷却した汚染水は、「ALPS」という放射性物質を除去する多重フィルターで処理され、「ALPS処理水」となる。このALPS処理水には、ALPSで除去できない「トリチウム(三重水素)」などの放射性物質が含まれている。トリチウムは、実際には「トリチウム水」として存在するため、通常の水とは分離しがたい。これが、ALPS処理水の海洋放出の際に問題となっている。
東電の案では、海岸から1km沖までトンネルを掘り、海面下約12mからALPS処理水を放出するとしている。
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福島原発事故、アルプス処理水を海洋放出して良いのか~報道では語られない諸問題と私の提案(1)以前の記事では、陸上から太平洋へパイプを伸ばし、海面下約400m以下の躍層より下層へ放出することを提案した。今回は、より具体的に提示したい。
図1のように海の垂直断面は、海面から「表水層」「躍層」「深水層」となる。このうち図2のように、表水層は物質の移動が活発で、ALPS処理水を表水層に放出すると、すぐに周辺の水と混じってしまう。図3は、太平洋西域の垂直断面で、海水の「放射性炭素14」による絶対年代、すなわち「海水の年齢」である。古い年代の水ほど、他の水と混じり合わないことを示している。図中のピンク部分は、福島第一原発のある位置である。このことから、ALPS処理水を「海面下約400m以深に廃棄すれば、表水層と交じり合いにくい」ことがわかる。図4は、海岸線と大陸棚の模式図である。大陸棚とは、氷河期には陸地であった場所である。これをもたらした海水面の低下は、寒冷化により海水が北極・南極に氷として閉じ込められたためである。また、大陸棚の先端は、氷河期の海岸線である。さらに大陸棚には、氷河期の川跡もあり、大陸棚に「海底谷」として残っている。
一方、海面の「波の影響」は、海面下約20mまでといわれている(岩崎書店 海のふしぎ)。
これらを踏まえてALPS処理水の具体的な太平洋への放出の方法を考える。まず海面付近は波浪の影響があるので、海面から波浪の影響のある深さ(深さ約20m)までは「トンネル」とする。そこから先は、海底の谷を利用して「太い金属パイプ」を大陸棚先端まで設置し、大陸斜面に放出する。実際には、この付近の太平洋は遠浅で、約60kmパイプを伸ばさないと大陸斜面には到達しない。パイプが実現できないのであれば、次の方法も考えられる。「太い金属パイプ」の代わりに「海底谷(川の跡)」を利用する方法である。汚染水の比重を大きく(重く)し、海底谷にALPS処理水を放出すれば、比重が大きいために海底谷(川の跡)のなかを大陸棚の端まで流れるはずである。なお、比重を大きくする方法は、放出するALPS処理水の「水温を4度にする」「塩類の濃度を上げる」ことなどが考えられる。この方法は、秋から冬の朝、朝霧が低地に流れ込むのと同じ原理である.この方法で重要なのは、「海底地形の詳細な把握」「海水の動き・海水温・塩類の濃度(密度)の3次元的な把握」のデータである。
(つづく)
<プロフィール>
千葉 茂樹(ちば・しげき)
福島自然環境研究室代表。1958年生まれ。岩手県一関市出身。専門は火山地質学。2011年3月の福島第1原発事故の際、福島市渡利に居住していたことから、専門外の放射性物質による汚染の研究を始め、現在も継続している。データ・マックスの記事
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原発事故関係の論文
磐梯山関係の論文この他に、「富士山、可視北端の福島県からの姿」などの多数の論文がある。
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