2024年12月27日( 金 )

仮想通貨の課税に対して強まる反発(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

課税が抱える問題点は?

仮想通貨 イメージ 仮想通貨取引においては取得価格が明確ではないケースが存在する。仮想通貨の税金では投資家が仮想通貨を売った金額から取得した金額を差し引き、その差額に税金が課されることになるが、韓国の国税庁では本人が取得価格を立証できない時には、取得価格をゼロにするという方針を打ち出した。たとえば、4,000ウォンで買った仮想通貨を10,000ウォンで売った場合、その差額の6,000ウォンが課税対象になるが、海外取引所で仮想通貨を買って国内取引所に送ったケースのように、取得価格がわからない場合、取得価格をゼロにし、売却価格1万ウォンが課税対象になるという。投資家としてはたまったものではない。

 とくに仮想通貨は取引所間の移動が頻繁に起こるので、取引所同士の情報共有ができていないと課税が難しい。海外取引所の場合にはなおさらである。また、本人のウォレットに保有していたコインを取引所に送って取引をするような場合、そのコインをいくらで買ったのかを取引所が把握するのは難しい。このように取引所同士の情報交換のためのインフラや、課税インフラを構築する必要があるため、来年1月からの課税は時間的に無理であると業界関係者は口をそろえている。また、仮想通貨の源泉徴収の税率が譲渡税率の20%と違い、25%であることも問題として指摘されている。

 韓国政府がコインを金銭として認めていないなかで、分散型金融の利子収益に課税するのはアンフェアだとされる。さらに、専門家はNFT(非代替性トークン)に対する脱税リスクについても指摘している。NFTは課税されないので、コインでNFTを購入した後に現金化すると、税金逃れが起こり得ることが懸念されているのだ。このように課税のためのインフラの不備など、諸々の問題があることから、業界は猛反発をしている。

 与党でも仮想通貨に詳しい国会議員を中心に課税を1年間猶予し、23年1月から課税することを主張すると同時に、仮想通貨所得を「その他の所得」ではなく、「金融投資所得」とみなし、5,000万ウォンまでは基礎控除する法案を発議した。このような状況にも関わらず、政府が仮想通貨への課税を予定通りに強行すると差益取引が委縮し、韓国の仮想通貨市場のガラパゴス化が進み、「キムチプレミアム」(韓国で仮想通貨の取引価格と、世界中の他の取引所の取引価格との差)がさらに大きくなると専門家は警鐘を鳴らしている。

 韓国では来年、大統領選挙が控えている。仮想通貨への課税を強行した場合、強力な反発をくらいかねないため、与党も野党も世論の動向を注視せざるをえない状況である。関連法律の整備、インフラの構築など、準備をしっかりとしたうえで、23年から課税するのも良いかもしれない。

 韓国政府は仮想通貨を認めていないにも関わらず、その所得に課税するというのは大きな矛盾である。消費者保護と市場の健全な発展のためにも仮想通貨市場の育成と課税は不可欠だろう。

(了)

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