2024年11月14日( 木 )

オンデマンドバス、着実に地域住民の足に~糸島半島で進む交通×IoT

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 糸島半島を舞台に、効率的な輸送体系の確立と、IoTの活用による良好な交通環境の創造を目的に進められている実証実験「よかまちみらいプロジェクト」。同プロジェクトを主導するよかまちみらいプロジェクトコンソーシアムの発足から1年が経過した。

二次交通が課題だった糸島半島

 観光地として、良質な食材の産地として脚光を浴びる糸島半島。交流人口が増加するなかで、改めて浮き彫りになったのが駅から観光スポットまでの二次交通の弱さだった。

 よかまちみらいプロジェクトでは、超小型電気自動車「トヨタC+pod(シーポッド)」のカーシェアサービス、電動自転車「よかチャリ」のレンタサイクル事業などを通じて、交通課題の解決に取り組んできた。

糸島商工会に配備された「C+pod」
糸島商工会に配備された「C+pod」

 「C+pod」は、予約から解錠・施錠・返却手続きまで、すべてスマートフォンアプリ「TOYOTA SHARE(要登録)」で完結する利便性の高さから、観光での利用も目立つという。とくに、糸島市の玄関口でもあるJR筑前前原駅からも近い糸島市商工会の稼働率は高く、こうした状況は「C+pod」向けの観光ルート形成など新たな可能性を感じさせる。

 トヨタレンタリース福岡伊都店で実施中のレンタサイクル事業は、九州大学伊都キャンパスに通う学生らの通学ニーズを満たすこともできる。伊都キャンパス内における「九大カーシェア(※1)」が、学生や教員からの利用を中心に目標を上回る稼働率44.9%を記録したことからも、学術研究都市という地域特性を生かしたさらなる展開が注目される。

※1:九大カーシェアは実証実験を1年間延長(2022年9月末まで)。学生のカーシェア利用データに基づき、低価格帯車両のラインアップの拡充、事故削減に向けた取り組みといった、持続可能なカーシェアモデルの実証などを行っていく予定となっている。

よかまちみらい号、地域住民の足に

8人乗りのオンデマンドバス「よかまちみらい号」
8人乗りのオンデマンドバス「よかまちみらい号」

 よかまちみらいプロジェクトが推進する数ある移動サービスのなかでも、糸島市内を運行するオンデマンドバス「よかまちみらい号(※2)」への期待は大きい。

 よかまちみらい号は、高齢者から交通利便性の向上が求められていた曽根・三雲エリア、前原・波多江エリアにおいて、21年3月~9月まで実証運行を行い、10月から本格運行へ移行した。直近の乗車人数は30~40人/日で、バス停数は124カ所に拡大。担当者によると、利用者は70代の方が多いとのことで、目標としていた交通弱者を救う地域住民の足としての役割をはたしているようだ。

 将来的には運行エリアを広げることで、さらなる利便性の向上を目指すほか、オンデマンドバスによる体験ツアーや医療Maasとの連携も視野に入れている。

※2:よかまちみらい号の利用には会員登録が必要となる(登録はコチラから)。

「my route」活用で効率的に移動

my route よかまちみらいプロジェクトでは、移動の際に必要となる情報(目的地までの最適ルート、目的地となる飲食店などの混雑具合など)を集約することで、より効率的な移動を支援する考えだ。

 そうした情報共有や1日乗車券などのデジタルサービスの提供に使用しているのが、おでかけアプリ「my route(マイルート)」。このアプリ1つで、前述した情報からオススメ観光スポットの検索、利用する移動サービスの予約・決済まで可能となる(詳細、登録はコチラ)。

 また、デジタルチケットとして乗車券のほかにもコロナ対策「コロナお守りパック(保険)付きデジタルチケット」など、利用者向けにさまざまなお得なクーポンを用意している。

 よかまちみらいプロジェクトは今後、(一社)糸島半島エコツーリズム協会(以下、エコツーリズム協会)とともに糸島半島の新たな観光ルート形成にも取り組む。

エコツーリズム協会では老若男女、誰もが気軽にスポーティーなライドを味わえるE-BIKEのレンタルを通じて、自転車だからこそ可能な寄り道の楽しさ、自分だけの映えスポットやお気に入り店舗探しを提案する(関連記事「【伊都便り】サイクルツーリズムで体感する糸島時間、E-BIKEで自分だけの体験を」)。

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交通×IoTで移動に選択肢、糸島でスタートした「よかまち」(前)

 よかまちみらいプロジェクトコンソーシアムの発足から1年。着実に糸島半島における移動の選択肢は増え、生活利便性は高まってきている。「移動サービスで北部九州を未来へつながるよかまちへ」という同コンソーシアムの目標達成に向けて、さらにサービスの幅を広げる予定としている。

 少子高齢化が進むなか、地域社会の持続可能な発展に向けてモデルケースとなれるか、今後の取り組みが注目される。

【代 源太朗】

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