2024年11月24日( 日 )

企業と企業、人と人とが結ばれて、事業は次の時代へ続く(後)

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(株) Kアライアンス・ジャパン 代表取締役社長
岡 崇史 氏

 高度経済成長、バブル経済とその崩壊、そして「失われた30年」…。戦後日本の激動の各フェーズを雄々しくたくましく生き抜き、日本社会を支え続けてきた中小企業経営者も、いまやその多くが事業継承に直面する時期に入った。とくにこのたびのコロナ禍は、これまでの事業の在り方を総括するとともに、培った技術とノウハウを新たな時代に活かせるようにする責務があることを、経営者たちに改めて認識させるものではなかったか。そんないま、「アライアンス型経営」戦略で知られる川邊康晴氏の理念と事業をしっかり受け継ぎ、自らも「100年企業」を目指して日々実績を積み上げている(株)Kアライアンス・ジャパンの岡崇史氏の言葉は、1つひとつが示唆に富む。後継者問題に悩む経営者から、自己実現の場としての就職先を探し求める若者たちまで、必見のインタビュー!

(聞き手:(株)データ・マックス 代表取締役 児玉 直)

寛容かつ粘り強い師の教育 見る人は見てくれている

 入所当初は、30歳ぐらいまでは勉強する期間にしようというぐらいの意識でした。この会社のこの仕事がそれこそ自分に「マッチ」すると思えたそのときに、役員でも目指して頑張ろうと。そのうちKアライアンス・ジャパンが設立されて、私が34歳で社長に就任させていただくことになったわけですが、小さい会社ですからね、別に「優秀だからやりなさい」と言われたわけではありません。40代も半ばにさしかかった今、20年間を振り返ってみると、会長の魅力もあって、やはり仕事を楽しめたからこそ継続できたのだと思います。今は、この事業を残していきたいと思いながらやっています。

 まだ新人のころでしたか、会長がある方に言っておられた、「将来何をするにしても、自分だけの信頼の人脈をつくりなさい。それがあれば、将来自分で独立したり他社に移籍したとしても、いいものを売れば、その人たちはお客さんとして離れない。だから若いうちに人脈をつくりなさい」という言葉を、今も忘れません。とはいえ、最初の10年間は、会長のお供をしながらいろいろな会に参加させていただきましたが、それが本当に自分の財産となって、いつか利益というかたちで表れてくるのか、正直申し上げて半信半疑でした。

(株) Kアライアンス・ジャパン 代表取締役社長 岡 崇史 氏
(株) Kアライアンス・ジャパン
代表取締役社長 岡 崇史 氏

 でも、川邊会長は人脈ができたらすぐそこに売り込みに行けと急かすような方ではありませんでした。営業が数字がとうるさくいわれる経営者さんは少なくないようですが、営業マンにとってそれは精神的にもかなりきついことです。会長のご本(編集注:『傍楽―よろこばれる提案営業』梓書院、2017年)にも「桃栗3年、柿8年、人脈10年」とありますけれども、私がいつか実を結べるような人脈づくりを積み重ねていくのを、会長は根気強くサポートし続けてくださいました。私が続けられた一番の理由はそこだと思っています。

 私自身がもともと、1つのことを続けられるタイプであったのはたしかです。幼いころから高校3年まで野球を続けましたからね。ある意味、それはやめる勇気がなかっただけともいえましょう。川邊事務所での仕事にしても、そういう側面がなかったといえば嘘になるかもしれません。でも、そうやって結果的に会長のもとで20年間やってきた私を見て覚えて下さっている方が、会長の元でがんばっているねと声をかけてくださるんです。積み重ねる姿を、見る人は見てくれているものなんだと、今まさに実感しています。

「社長」の矜持:持続のために、そして次世代が受け継ぐために

 とはいえ、「社長」の名刺をもつようになってからは、人脈をつくりながらのんびりと営業していくわけにもいきません。川邊会長から受け継いだこの事業を持続させるために、収益を上げていかなければならない。これまで10数年一緒にやってきたスタッフ、新たに入社したスタッフもいますし、何より、世の中に私どものような仲介業は必要だと思うからです。実際、銀行さんは今どこでも、お金の融資に加えてソリューション=ビジネスマッチングに注力なさっていますが、それは大きな社会的ニーズがあることの証左です。

 大きなネットワークをもっている銀行さんですから、地元の企業さんたちにとっては非常に良い流れだと思います。銀行さんに自社のサービスをしっかり理解してもらったうえで、他の企業さんにつなげてもらう。とくに今回のコロナ禍で、多くの企業が変革を迫られたわけですが、新たな一歩を踏み出すためにも、地場企業は銀行に加わったこの機能をどんどん活用すべきでしょう。私どもは事業の新たな柱をつくっていかなければなりませんが、それでも、川邊会長のもとで自然に身についた、九州の地域企業にお役に立つ経営情報をお届けすることで地域に貢献するという志と、信頼を通じて長く続くネットワークづくりに、引き続き尽力することが基本だと私は考えています。

 幸い、九州・福岡エリアには川邊会長が築き上げてこられた「ブランド」があります。しかも福岡は情報が集まりやすい。首都圏の企業さんが自社商品の全国展開を考える際、拠点として必ず福岡支店開設を検討されます。そのときに、やっぱり20年やっていますからね、どこかで当社を紹介されて相談に来られます。インターネットで調べるのではなく、こうしてリアルに人が来られるので、我々のほうが東京の企業情報に詳しいということも珍しくありません。

 川邊会長はお客さまに「100年企業を目指しなさい」とよく言われます。Kアライアンス自身もそれを目指したいと思います。とはいえ、当社は17年目の会社です。私が60代半ばになるまであと20年続けられるとしてもトータルで37年ですから、残りの63年を引き継いでくれる次世代の人のことを真剣に考えていかなければと思うこのごろです。就活されている若い方々には、会社とそこにいる人々をよく観察しながら、試練を1つひとつ突破するための作戦を立てることを楽しんでくださればと思います。私自身、氷河期の厳しい状況のなか、どうすれば内定してもらえるのかを考え実行したスリリングな駆け引きを楽しみました。その過程で、将来のキャリアの礎となるような何かを経験できるはずです。就職とは、他の誰とも違う個性同士の「マッチング」にほかならないのですから。

(了)

【文・構成:黒川 晶】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:岡 崇史
所在地:福岡市中央区大名2-4-19
設 立:2005年9月
資本金:300万円
URL:http://k-alliancejapan.co.jp

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