2024年11月14日( 木 )

世界平和に向けて(27)外国人入国制限要件の大幅緩和へ始動(前)

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 政府は新型コロナウイルスの水際対策を継続してきたが、ワクチン接種の普及にともない、国際社会に歩調を合わせる方向で、外国人のビジネス関係者や留学生、技能実習生などに対する入国制限要件を11月8日から大幅に緩和した。

経済正常化に向けた第一歩

国際線 イメージ これまで日本経済団体連合会(経団連)は政府に対し、水際対策の緩和を強く求めてきた。少子高齢化が急速に進み、生産年齢人口が増える見通しもまったく立たないという事情を抱えるなか、働き手が不足しているさまざまな業界からは、経済正常化に向けての再始動だと歓迎する声が聞かれる。

 外国人ビジネス関係者を受け入れる企業、外国人留学生を受け入れる学校などは、各所管省庁に活動計画書を提出する必要がある。

 海外から日本に入国する者は、外国人だけに限らず邦人の帰国者も自宅やホテルなどで3日間の外出制限を厳守し、待機しなければならない。3日間の待機後にPCR検査を受けて陰性が確認できれば、入国してから10日目までの外出時は、前述の活動計画書に基づいた行動を厳守しなければならないというルールである。

 ワクチンを接種した入国者であっても、今回の緩和措置の前までは最短10日間の待機期間を厳守しなければならなかったが、ビジネス目的の入国者に限り、待機期間の10日間が3日間に短縮されることになった。

 ただし、待機期間を短縮できる対象のワクチンは、日本が薬事承認したものだけに限られている。米ファイザー製、米モデルナ製、英アストラゼネカ製の3種類のいずれかを接種した入国者だけが対象となる。

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 海外もワクチン接種の普及を受けて、水際対策の緩和を行っている。たとえば、米国は外国人渡航者の航空客へのワクチン接種を義務づける代わりに、入国後の自己隔離は求めていない。欧州連合(EU)も加盟国に対し、欧州医薬品庁(EMA)が認めたファイザー製、モデルナ製、アストラゼネカ製、J&J(ジョンソン&ジョンソン)製のいずれかのワクチン接種者については渡航を制限しないように促している。

ビジネス目的以外の入国者の緩和条件

 在留資格の事前認定を受けていても、日本政府の水際対策が理由で来日できていない外国人は10月1日時点で37万人にも上り、その7割が留学生や技能実習生などの在留資格者で占められていると推計される。

 これらの入国者については、受け入れ企業や日本語学校・専修専門学校・大学などの受け入れ先が厳格な行動管理を行うことを条件に、最短10日間の待機期間を経過しなければ外出できない状況となっている。

 とくに技能実習生を求める企業が監理団体(協同組合)を通して、海外の人材送り出し機関へ人材のスキルや人数の募集を依頼して、応募者が集まって企業の面接が終わり、採用予定の人材を決めるまでに最低1カ月間は必要となる。

 ここから送り出し機関で法定の約6カ月間の研修を終わらせた後に、入国手続きをして来日できる準備が整う。そして、新型コロナウイルスの感染状況や規制緩和の状況が現行と変わらなければ、来日後に10日間の待機期間がある。

 それから企業に雇用されて入社するまでには法定の約1カ月間の研修期間があり、この研修が終わらなければ企業は正式に雇用して入社させることができない。技能実習生が仕事に就けるのは、募集の依頼から最速でも8カ月以上経ってからである。

 つまり、人手不足を補う目的・主旨では現行法の下で雇用できない技能実習生よりも迅速に企業が外国人労働者を雇用したい場合、合法的に人手不足の解消を目的に雇用できる在留資格である特定技能の採用ならば、特別な研修期間もなく、最も迅速に雇用できる。そうした理由から筆者は推奨している。

(つづく)

【岡本 弘一】

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