米国文化の薫り残る志賀島・西戸崎 自然保護とIR誘致で住み続けられるまちに
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志賀商工会 会長
井上 準之助 氏「アメリカがあったまち」
商工会は地域の商工業の活性化を目的に、商工会法に基づき主に町村に設置される特別認可法人である。志賀商工会は1960年に糟屋郡志賀町(当時)にて設立され、同町が71年に福岡市に編入された後も存続している。早良商工会とともに、西戸崎、志賀島エリアに根差した活動を展開している。
西戸崎で生まれ育った井上準之助会長は、福岡市中心部へ若年層が流出していくなか、両地域で働きがいのある仕事を創出するとともに経済を活性化することにより、若い人が将来にわたって、働き、住み続けられるまちにしようと熱意をかたむけている。
地域住民を中心とする有志による IR (統合型リゾート)誘致促進委員会が海の中道海浜公園へのIR誘致を考えており、井上氏は同委員会会長として、米国のIR事業者と情報交換を行っている。井上氏はこの構想について、「コロナ後も見据え、この地域で生まれ育った人たちに多くの雇用を創出する大きな機会となり、地域の商店にとって大きな意義をもつ」と期待を寄せている。同委員会は2020年8月に福岡市長・議長などに政府への申請を提案する上申書を提出した。
井上氏は同地域のまちづくりの重要な要素の1つとして米国文化を挙げる。西戸崎はかつて、マリリン・モンローも慰問に訪れた米軍基地「キャンプ・ハカタ」(1945~72年)が置かれ、米兵と住民が共生・交流して賑わいを見せていた。そうした「アメリカがあったまち」としての記憶が、無形の遺産となっているからだ。
井上氏によると、現在も同地域にはアメリカ文化の薫りがするとして、若者が引っ越してきて店をオープンさせるケースが多いという。井上氏が館長を務める西戸崎公民館では、当時の様子を伝えるため関係者から提供を受けた写真を展示、全国から来館者が訪れている。20年からは九州産業大学と連携してシャッター・アートを実施し、アメリカらしい雰囲気を醸し出している。
稀少な野鳥が飛来する海の中道 自然保護と開発との両立を図る
西戸崎・志賀島は博多湾に面し、自然環境に恵まれた地域である。海の中道の砂浜には多くの渡り鳥が飛来してくる。そのなかには、国際自然保護連合 (IUCN)絶滅危惧 IA 類(CR)指定のヘラシギも含まれる。夏の一時期に同地に生息するナミノリソコエビ類をエサとして飛来してくるという。環境保護、野鳥保護のNGOが数年前から注目し、実態把握と保護に努めているが、井上氏は西戸崎公民館長として情報共有を図るとともに、釣り人には釣り針など鳥がケガをしたり誤飲したりしそうなものをできるだけ放置しないよう呼び掛けている。また、福岡市にも保護を求める働きかけを始めた。
井上氏たちは米国のIR事業者と情報交換を行う中で、彼らの環境保全意識が非常に高いことを実感し、地域の恵まれた自然環境を保護していくことへの意識を強めた。IR事業が豊かな自然環境に配慮されたかたちで展開されることを確信しつつ、西戸崎・志賀島エリアの活性化へ向けて、日々邁進している。
<INFORMATION>
所在地:福岡市東区西戸崎1-5-18
設 立:1960年11月
TEL:092-603-0112
URL:https://f-sika.jimdofree.com/
<プロフィール>
井上 準之助(いのうえ じゅんのすけ)
1955年糟屋郡志賀町(現:福岡市東区)西戸崎生まれ。同地にて美容室「BOY」を経営する。2018年、志賀商工会会長に就任。13年から西戸崎公民館長、20年からIR誘致促進委員会会長も務める。関連キーワード
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