空間の有効活用で豊かで強靭な生活を　キーワードは「工務店のお役立ち」

（株） 栄住産業　顧問　宇都 正行 氏

防水加工事業から生まれた屋上庭園

　青空に映える色鮮やかなプランターの草花。人工芝の上で駆け回る子どもたちの歓声。幸せいっぱいの家族に目を細めつつ、デッキチェアでコーヒー片手に読書を楽しむ――都会の自宅の屋上に、そんな憩いの空間が出現したら、どんなに生活が豊かになることだろう。（株）栄住産業は、そうした憧れの屋上庭園を実現する水平屋根の金属防水工法で全国にその名を知られる、九州の誇る企業である。

　現在顧問を務める宇都正行氏が1975年に鹿児島で創業した。79年には本社を福岡市に移転、九州全域で木造家屋の水平屋根やバルコニーの防水工事を手掛けるようになる。屋根に傾斜がついているのは雨水の家屋への侵入を防ぐためであるのに、なぜわざわざ水平にする必要があるかと、強い抵抗に直面する時期も長く続いた。だが、独自の防水技術に対する自信と、これが新しいライフスタイルを切り拓くという確信は揺らがなかった。

　果たして、都市部の人口集中と地価高騰によって1戸あたりの土地が狭小化するに伴い、空間の有効活用が叫ばれる時代が到来、同社の技術は全国から注目を集めるようになる。2001年には、揺れを分散させる仕組みで耐久性も高めた金属防水工法「スカイプロムナード」をリリースし、同社の地位は不動のものに。13年には「優れた建築を生み出すことに貢献しうる、優れた建材・製品」に贈られる「HEADベストセレクション」を受賞した。この技術が、冒頭に述べた屋上庭園――「OSORAリビング」シリーズ――として結実したわけである。これはまた、自然災害時には垂直避難のための屋上空間をも提供し、持続可能な都市及び人間居住の実現に寄与する。この功績により、同社は20年、「ジャパン・レジリエンス・アワード（強靭化大賞）」最優秀賞の栄冠に輝いた。

中小工務店を支えるPR動画の制作

    そんな華麗な軌跡を残す同社が、あくまで「工務店のお役立ち」を掲げてきた謙虚さには驚かされる。その端的な例が、顧客サービスとしての4Dバーチャル展示場動画制作だ。

　工務店にとって住宅展示場を開設することは、住宅購入を検討する人に「ここに任せたい」と思わせるために重要な営業活動のひとつであり続けてきた、だが、中小の工務店には莫大なコストがかかる上、それに見合う成約率を確保できるとは限らない。宇都氏は顧客たる中小工務店のそんな悩みに寄り添い、13年、フィリピンにIT事業の法人を立ち上げた。そして、マネジメントを新進気鋭の若き社員たちに託し、バーチャルモデルルーム動画の制作に取り組ませたのである。まるで映画を見ているような、美しいCG映像。これを破格の値段で顧客に提供し、その営業をバックアップするようにしたのだ。

　21年、同社はM&Aを通じてスケールメリットを獲得し、新たなスタートを踏み出した。同時に、IT部門は（株）ねこ（代表：原口純也氏）として独立。宇都氏は「これからも共に『工務店のお役立ち』に取り組んでいきます」と意気込む。

＜COMPANY INFORMATION＞
代　表：宇都　和光
所在地：福岡市東区原田3-5-6
設　立：1976年2月
資本金：9,800万円
ＴＥＬ：092-622-6292
ＵＲＬ：http://www.eijyu.co.jp

＜プロフィール＞
宇都　正行（うと　まさゆき）
1944年7月、鹿児島市生まれ。68年3月、鹿児島経済大学卒業。75年9月に栄住産業を創業。76年2月に法人改組し、（有）栄住産業を設立。89年2月に株式会社に改組。趣味はゴルフ。