2024年11月24日( 日 )

既存メディアの衰退と新メディアの台頭について(2)

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『週刊現代』元編集長
元木 昌彦 氏
ビデオニュース・ドットコム代表
神保 哲生 氏

 この国のマスメディアの腐敗は確実に、深く進行していて、もはや後戻りのできないところまできてしまっていると、思わざるを得ない。東京五輪のスポンサーに朝日新聞を始め、多くのマスメディアがこぞってなったとき、ジャーナリズムとして超えてはいけない“ルビコン”をわたってしまったのである。その後も、NHKの字幕改ざん、読売新聞が大阪府と包括協定を結ぶなど、ジャーナリズムの原則を自ら放棄してしまったと思われる出来事が続いた。
 神保哲生さんは、そんななかで、希少生物とでもいえる本物のジャーナリストである。彼が「ビデオニュース」社を立ち上げた時からのお付き合いだが、時代を射抜く目はますます鋭く、的確になっている。神保さんに、マスメディアの現状とこれからを聞いてみた。

(元木 昌彦)

左から、『週刊現代』元編集長 元木昌彦氏、ビデオニュース・ドットコム代表 神保哲生氏
左から、『週刊現代』元編集長 元木昌彦氏、
ビデオニュース・ドットコム代表 神保哲生氏

デジタル時代のメディア

 元木 新聞のデジタル化も多少成功しているのは日経だけで、ほとんどが苦戦しています。アメリカのニューヨーク・タイムズのデジタルの契約数は約1,000万人、ワシントン・ポストの購読者は約300万人と、これだけ見れば成功しているように見えますが、英語圏で「クオリティペーパー」といわれる新聞をもってしても、この程度の規模ですから、大成功とはいえないと思います。まして、クオリティペーパーでもなく、日本語市場は小さいから、日本の新聞が生き残るのは至難の業だと思います。

ビデオニュース・ドットコム代表 神保 哲生 氏
ビデオニュース・ドットコム 代表
神保 哲生 氏

    神保 ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポスト、フィナンシャル・タイムズなどは、紙の時代から世界的に知られる「ブランド」だったわけですから、ネットによって地域性の壁が取っ払われれば、黙っていてもそれくらいは売れて当然だと思います。もともと英語の優位性もありますから。ただ、彼らが実践しているジャーナリズムはまだ紙の時代の古いタイプのジャーナリズムの延長で、私から見ると非常にコスト効率が悪いので、ブランドの神通力だけで本当に最後まで生き残っていけるのかどうかはわからないよ、というのが私の見方です。まだまだこれからネットに特化された新しいメディアが出てくるでしょうが、古いモデルで成功を収めた事業者は、そのモデルを捨てて新しいモデルに乗り換えるのが簡単ではありません。今日の成功がいつ明日の失敗につながるのかがわかりません。

 IT技術の進歩は目まぐるしく、メディアの形態も視聴者の利用習慣も、あっという間にまったく新しいものに置き換わってくる可能性が十分にあります。実際、今や若い人は新聞はおろか、テレビも見ない人がほとんどです。

『週刊現代』元編集長 元木 昌彦 氏
『週刊現代』元編集長
元木 昌彦 氏

    元木 私がいた出版界ではデジタルが伸びていますが、そのほとんどはマンガです。私が「web現代」を講談社で立ち上げたのは1999年ですが、その頃でも、マンガはデジタルと相性が良いと思いました。講談社、小学館、集英社など、マンガに強い出版社は今のところ好調ですが、韓国のwebマンガが伸びてきています。映画と同じように、マンガでも韓国に抜かれる日が来るかもしれません。

(つづく)

【文・構成:石井 ゆかり】

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<プロフィール>
元木 昌彦
(もとき・まさひこ)
1945年生まれ。早稲田大学商学部卒。70年に講談社に入社。講談社で『フライデー』『週刊現代』『ウェブ現代』の編集長を歴任。2006年に講談社を退社後、市民メディア『オーマイニュース』編集長・社長。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。現在は『インターネット報道協会』代表理事。主な著書に『編集者の学校』(講談社)、『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)、『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)、『現代の“見えざる手”』(人間の科学新社)、『野垂れ死に ある講談社・雑誌編集者の回想』(現代書館)などがある。

神保 哲生(じんぼう・てつお)
1961年東京生まれ。15歳で渡米。コロンビア大学ジャーナリズム大学院修士課程修了。AP通信など米国報道機関の記者を経て独立。99年、日本初のニュース専門インターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』を設立し代表に就任。主なテーマは地球環境、国際政治、メディア倫理など。主な著書に『ビデオジャーナリズム』(明石書店)、『PC遠隔操作事件』(光文社)、『ツバル 地球温暖化に沈む国』(春秋社)、『地雷リポート』(築地書館)など。

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