2024年07月16日( 火 )

円安は中国経済にとって「諸刃の剣」

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円安 イメージ    今年に入り、世界の為替市場で日本円の動きに注目が集まっている。ドルの利上げやウクライナ情勢などの影響を受け、3月初めに1ドル114円前後だった為替レートは129円に至り、わずか1カ月半でドルに対して10%以上も値下がりした。1ドルの両替で手に入る金額が15円も増えたことになる。

 2021年の初めは1ドル103円前後であったが、それから1年余りで20%以上も値下がりしている。

 世界の主要通貨25種類に対する日本経済新聞の調査によると、通貨の実力を示す日経通貨インデックスで、今年の第一四半期、円はロシアのルーブルに次ぐ落ち込みを記録した。

 こうした円の値下がり傾向に対し、日銀は介入策を講じておらず、概ね容認している。金利差が拡大するなかでの介入はコストがかかる上、効果は望み薄である。円安で輸入商品の価格が上がり、物価が大幅に値上がりしているが、輸出を刺激する結果ともなり、外需により経済が活性化されることもあり得る。

 この円安による、中国経済に対する影響を考えてみよう。

 人民元と円のレートは、今年初めは1万円=530元であったが、4月末には492元となっている。

 元が円に対して大幅に値上がりした結果、中国では日本からの輸入品が価格、利益とも上昇しており、年初に比べて約10%の為替差益が生じている。

 また、多くの留学生が日本を訪れ、学費や生活費を払うために元を円に換えるわけだが、昨年の初めに比べて出費が実質約20%減った。100万円を手にするのに以前は6万元が必要だったが、今は5万元で済み、各家庭で負担が減っている。

 日本への不動産投資も同様で、物件の価格も2割ほど安く買えることになる。ただし、日本に商品を売って円を獲得する輸出型の企業からすれば、利益は大幅ダウンとなる。この1年間で20%近い為替差額が生じている。

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 製品の半分が日本企業からのオーダー分であるという上海の金属品製造会社の社長によると、2021年初めから現在まで、材料である鋼板の価格がトンあたり6,500万元(約12.7万円)から9,300元(約18.2万円)と、40%も値上がりしたという。価格交渉や人件費の節約で収支バランスを保っていたなか、この1年間で円が20%も値下がりした。日本企業からの融資を基に両替して原材料を購入しているこの会社は、1年間で利益の出る余地が圧迫され、損失が増える一方である。

 こうした長期的な円安傾向は、中国企業からすれば逆風であり、中国経済全体もマイナスになるであろう。円安は中国経済から見て「諸刃の剣」なのである。


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