中国・消費時代の大学生のプレゼント事情
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イベントデーや何かの記念日を迎えたとき、あなたは恋人とプレゼントを交換しているだろうか。心を込めて用意した手づくりのプレゼントを渡したものの、相手の反応が薄かったら、あなたはがっかりするだろうか。
西北大学の劉大為さんは、「絶え間なくプレゼントを送ったり受け取ったりするなかで、恋愛関係が確立されるもの」と考え、「愛情マネジメント」の概念を打ち出している。マネジメントは理性的な計算であり、愛情は情緒的な衝動だが、この対称的な2つの概念を合わせると、消費主義時代の恋人関係がどのように築かれているかをうまく説明することができる、というものだ。
プレゼントには「感情の表現」と「ツール」の役割がある
賀さんは最近、付き合い始めたばかりの恋人の男性からスマートフォンをプレゼントされた。付き合ってから日も浅くまだ何も決まっていないのに、スマホの贈り物は高価すぎると考えた賀さんは受け取ろうとしなかった。しかし彼氏は譲らず、「受け取ってくれないならスマホを捨ててしまう」というので、賀さんはやむなく受け取り、すぐに家に帰って家族からお金を借り、スマホ代として男性に送った。
賀さんのケースは劉さんのチームの調査研究における1つの事例だ。劉さんたちの研究でわかったことは、恋愛の初期には、熱に浮かされたような激しい恋愛感情が主導的位置を占めるが、一緒にいる時間はまだ短くお互いのことをよく知らないため関係には不確実性がもたらされる。不確実性があり、恋愛感情が長く続くかどうかわからないため、プレゼントを贈られた方は「借りをつくりたくない」と考え、同じくらいの値段のものを返礼として送ったり、プレゼントを受け取るのを拒否したりする。
人類学者の閻雲翔さんによると、プレゼントには「ツールとしての役割」と「感情を表現するものとしての役割」があるという。ツールとしては物質的な価値が重視される一方で、感情の表現としては感情の規範に則ることが重視され、モノの背後にある象徴的な意味が強調される。前出の賀さんの彼氏から見れば、高価な贈り物は2人の関係を真剣にスタートさせたいという誠意の表れや愛情の表現、ある種の理想化されたイメージづくりのためだけでなく、贈った側の経済力を誇示するものなのかもしれない。
消費主義の下での親密な関係
恋愛初期の恋人たちはプレゼントは欠かせないと思い、いろいろ模索するものだが、付き合いが長くなると今度は何を送ったらいいかと頭を悩ませることになる。
劉さんによると、上の世代の恋人たちの親密な関係が周囲から分かりにくかったのと異なり、今の若者は親密な関係をより強くアピールしようとする傾向がある。「秋の1杯目のミルクティ」をプレゼントするような、顕示的でパフォーマンス型の「見せる愛情表現」がその例だ。「大学生はそうと自覚しないままこの流れに乗り、業者もそれを期待する。『秋の1杯目のミルクティ』のプレゼントというトレンドは2020年に登場したが、21年秋になってもまだ続いていることを見ると、消費主義と親密な恋愛関係がここでもうまく結び付いて経済効果を生んでいることが分かる」と劉さんは指摘する。
プレゼントをめぐる確執の背後に愛情の問題
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中国の若者は何にお金を使っているか特定のプレゼントをやりとりする節目に、もしもどちらかがプレゼントのことを忘れてしまったら、パートナーから感情面の「制裁」を受ける可能性が高く、たとえば愚痴をいわれる、冷戦状態になる、口げんかをふっかけられるなどを通じて不満を訴えられることだろう。より深刻な場合は別れ話に発展する。
劉さんは、「プレゼントをめぐる争いの背後には、愛情そのものに問題があるからだ。絶えず贈り物を受け取ることで愛情をたしかめる必要がある時というのは、愛情がもろくなっているときにほかならない。受け取る側が関係性のなかで安全な感じを得られず、プレゼントをもらえないときはもらえないことを悩み、もらえばもらったで失うことを悩むのは明らかだ。社会学の視点で見ると、こうした関係のモデルは不健全で不安定だ」としている。
プレゼントの背後に関係性のバランス
さまざまな研究から明らかになったのは、男性が贈り物をする確率と頻度が女性を上回ることだ。
劉さんは、「プレゼントのアンバランスさは、実は恋愛における両性の関係性を示している。『男らしさ』の追求であれ、女性は愛されるべき存在という観念であれ、根本的には両性の権力関係のアンバランスさを認めるものにほかならない。プレゼントには常に支配という性質があり、一方的に受け取るばかりでは被支配的な立場に陥り、恋愛関係のなかでは劣勢に立たされることになる」との見方を示す。
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