【徹底告発/福岡大・朔学長の裏面史(中間まとめ)】専横をどこまで許すのか(後)
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笑い話のようにしか読めない
不当な人事介入、取り巻きの優遇を続ける朔啓二郎・福岡大学学長。ここまで横車を押し通すことができるのも、福岡大学理事会が形骸化しているためだ。このままで、福岡大学の明日はあるのだろうか。
今となっては、笑い話のような福岡大学学報がある。朔学長が誕生した2019年9月に発行された「509臨時号」だ。朔学長の所信表明が、ほかの学長候補4人とともに掲載されている。そのなかで、朔学長は「福岡大学が生まれ変わる4つの改革を4年で実現」と公約。執行体制の改革の項目では「正義の実現のために、学内会議体の活性化に資する執行部を組織し、公平公正な運営に努めます」とし、働き方とキャンパスの改革の項目では「女性研究者、若手研究者の多様な人材を登用し、活躍を促進します」と謳っている。「九州大出身者はとらない」と公言したり、取り巻きを優遇したりする姿勢をみると、所信表明は笑い話のようにしか読めない。
形骸化した理事会
福岡大学出身者に固執する朔学長が専横的な姿勢を続けることができるのも、本来、学長を監視、指導するはずの理事会が形骸化しているためだ。私立学校法では、理事会は、学校法人の最高意思決定機関であり、理事会が、所属する理事の監督機関でもあるということを明記している。
20年の文科省の大学のガバナンスについての有識者会議では「大学が行う意思決定によって直接利害を受ける教職員が公平な判断を行うのは難しく、閉鎖的になりがち。個人の関心から切り離したかたちで運営することが重要」として、理事会の責任の大きさを指摘しているが、福岡大学の理事長は、福岡財界の有力者が、言わば名誉職のようなかたちで引き受けてきた。このため、「教学主導」の名の下に、学長以下の執行部が、理事会の動向をほとんど気にせずに運営してきた。
このため、「理事長が大学に来るのは、入学式、卒業式ぐらい」「学校法人理事長として決裁が必要なときには、職員が理事長の会社(九州電力など)に出向いていた」「理事長の印鑑を事務局が預かり、事務局長の判断で押印することもあった」などといわれてきた。法律に従えば、現職の貫正義・理事長は、専務理事の朔学長に問題があれば、きちんと指導しなければならないが、名誉職と考えているとしたら、指導するような気持ちも起きないだろう。
理事会の形骸化を裏付けるように福岡大学には長い間、理事長室がなかった。10年に理事長に就任した鎌田迪貞・九州電力相談役(当時)が「大学に足を運びたい」と言ったことから、当時の執行部が大慌てで、大学本館の会議室を改装し、理事長室を設置したそうだ。最近まで、きちんとした理事長報酬も支給していなかったとされ、理事長や理事会がお飾り的な存在だったことが分かる。学生数の減少は続く
国が大学改革を求めているのは、大学経営が今後、厳しさを増すこととリンクしている。高校3年生を意味する18歳人口は、大学入学予定者数と言って良いが、近年、年間5,000人から2万人程度、減ってきている。今年度の18歳人口は112万1,000人。厚生労働省の人口動態統計によると、コロナ禍もあって、21年に生まれた子どもの数は約84万人にとどまっている。1998年に120万人だった年間出生数が、100万人を割り込んだのは18年後だったが、今回はわずか6年で約20万人減ったことになる。戦後のベビーブームで誕生した「団塊の世代」と比べると、出生者数は3分の1近くに減っている。
高校から大学への進学を当然のように考える向きもあるかもしれないが、4年制大学への進学率が50%を超えたのは09年だ。同じ世代の半数は高卒で就職したり、短大や専門学校に進んだりしていた。今でも50%を少し上回る程度で推移している。この数字を当てはめると、18年後の大学生は40数万人になる計算になり、大学は否応なく、生き残りをかけた戦いに巻き込まれていくことが分かる。
新型コロナウイルスや東京五輪の影に隠れたためか、大きな話題にならなかったが、21年9月、大学関係者を震撼させるニュースが流れた。日本私立学校振興・共済事業団が、募集停止などをのぞく私立大597校などを対象に、21年春の入学者を調べたところ、定員割れの大学は277校にのぼったという。入学者を入学定員で割った入学定員充足率は99.8%で、100%を切ったのは、1999年度の調査開始以来、初めてだった。100%割れの理由として、新型コロナの影響による外国人留学生の入国制限、文科省による都市部を中心とする大学への定員厳格化なども挙げられているが、最大の要因はいうまでもなく、18歳人口の減少だ。
今般の参院選では、各党は安全保障、物価高などを公約に掲げていたが、日本が抱える最大の課題はこの驚異的な少子化と言わざるを得ない。
厳しさ増す大学経営
私立大学は収入のうち、学生生徒の納付金が8割を占めるため、学生、生徒の減少は経営に直結する。受験者が減れば、検定料の減少につながる。少し考えると、分かることだが、授業料は講義を行う教員らの人件費、教材費などに充てられるわけだが、受験生が2倍に増えても、問題用紙を刷り増しすれば済む検定料は、大学にとって大きな収益源になるという。
収入が減っても、支出のうち、6割を占める人件費に手を付けるのは難しい。もちろん、授業料を大幅に上げるわけにはいかない。若者が減ったからといって、留学生や再教育を受講したいという社会人で、帳尻を合わせようという意見もあるようがだが、現実的には至難の業だろう。
18歳人口の減少で、今後、大学の募集停止や廃校が予想されるが、その兆候は現れている。福岡県内だけみても、2002年に設置された福岡医療福祉大学(太宰府市)は11年に学生募集を停止、14年に廃校となった。保健医療経営大学(みやま市)を運営する学校法人ありあけ国際学園は理事会を開き、廃止を前提として20年度の学生募集を停止することを決めた。保健医療経営学の学士が取れる日本唯一の大学という触れ込みで開学したものの、開学以来入学者数が定員を満たしたことがなく、23年春で閉学する見込みだ。
福岡大学はどうなるのか
これらのデータをみただけでも、文科省が大学改革を求めるのもお分かりだろう。今後、大学は生き残りをかけた戦いを強いられることになる。九州有数の私大、福岡大学も例外ではない。受験者の減少は避けられず、定員割れの学部、学科が出てくるかもしれないのだ。
福岡大学の学長の任期は4年。3選を禁じている。朔学長は23年に一期目を終えるが、再選されれば、27年まで、「朔ワンマン体制」が続くことになる。そのとき、福岡大学はどうなっているのか。心ある教職員や同窓生の不安が募るばかりだろう。福岡大の教職員1人ひとりが、「大学の将来」をしっかりと考えてほしい。
(了)
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