韓国経済ウォッチ~米ファンド、韓国政府を相手に初のISD提訴(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
ローンスターは2003年10月、経営危機に陥った韓国外換銀行に1兆3,830億ウォンを投資し、持ち株の51%を確保した。ローンスターは韓国外換銀行の経営を立て直し、収益性を大幅に向上させた後、12年に韓国外換銀行をハナ銀行に3兆9,157億ウォンで売却。ローンスターは9年ぶりに2兆ウォン以上の収益を上げた。すなわち9年間でローンスターは219%の収益率を上げたことになる。
しかし、ローンスターが問題にしているのは、次のようなことだ。07年9月にローンスターは香港上海銀行(HSBC)と、5兆9,376億ウォンで韓国外換銀行を売却する内容の売買契約を締結している。これに対して韓国の金融監督院は、売却の承認を1年近く先送りした。ローンスターは08年4月までHSBCと契約延長して承認を期待したが、最終的に金融監督院の承認は得られず、HSBCは世界金融危機の余波もあり、09年9月契約を諦めることになる。
ローンスターは韓国政府の承認の先送りによって、約2兆ウォンの損失が発生しただけでなく、その間の諸費用を考慮すると、その損害賠償額は3兆3,800億ウォンに上ると主張している。
さらに、その間納税した金額に対する返還を含めて、合計で5兆ウォン(約5,000億円)の損害賠償を、国際投資紛争解決センターを通じて韓国政府に求めたのだ。しかし、韓国政府の主張は違っている。ローンスターが韓国外換銀行の買収費用を抑えるために虚偽の減資説を流布したことと、また株価操作の疑いもあって、ローンスターが捜査を受けていたため売却の承認ができなかっただけで、故意に承認を延ばしたわけではないと主張している、
ローンスターは今回の件に、かなりの自信を示している。その理由としては、このような国際仲裁では、投資家が有利になるケースが多いからだ。また、仲裁人は両方が1人ずつ任命し、議長は両者が合意する人物を選定することになる。すなわち、仲裁の決定にローンスターは半分の影響力を確保したことになる。このような国際紛争に経験のある弁護士は、韓国では1名に過ぎないが、米国には144名もいるため、言葉の壁だけでなく、いろいろな面でローンスターは有利であると判断しているようだ。
韓国は、今回の裁判に負ければ、巨額の賠償金を国民の血税で賄うことになるし、たとえ勝っても余計な訴訟費用を200万ドルくらい負担することになる。
また、今回の件は初のISD条項をめぐる仲裁でもあるだけに、今後、自由貿易協定で発生するであろう仲裁の行方を占うバロメーターになることから、結果が注目を集めている。(了)
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