参院選後の日本の進路を問う~独立言論フォーラム・シンポ(前)
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参院選後、ウクライナ危機や台湾有事などの脅威が叫ばれ、まるで「戦争前夜」のような混とんとした状況のなか、日本は突破口を見出すことができるのか。これからの日本の政治の進路を話し合う場として、ISF(独立言論フォーラム、Independent Speech Forum)による公開シンポジウム、「参院選後の日本の進路を問う~戦争前夜の大政翼賛化」が8月7日に開催された。
政策連合で政権交代の実現を目指す
政治経済学者・植草一秀氏は、講演のなかで7月の参院選で立憲民主党が惨敗した大きな原因として、与党に対峙する政治勢力として野党団結が欠かせなかったが、立憲民主党が共闘する対象を国民民主党と連合のみに限定したことを挙げた。小選挙区制では、野党が複数の候補を立てると与党に勝てない。れいわ新選組や社民党など野党が統一候補を立てるにあたり立憲民主党が離反したため、野党は与党を倒せなかった。
植草氏は「参院選が終わり、憲法改定への議論が本格化する可能性があり、ウクライナ問題の次は台湾有事というストーリーがつくられています。しかしウクライナ問題と台湾を含む日中関係の問題には、強い因果関係があります」という。
まず、日中関係が大きく悪化したのは、2010年に中国漁船と海上保安庁の巡視船が衝突した事件があったときだ。この事件により、中国に対する脅威が国内で広げられ、日本は米国と手を組んで戦いに備えるべきだという世論形成がなされた。しかし、この認識には大きなゆがみがあった。
日中間では、これまで尖閣諸島の領有権問題を認め、問題を先送りする「棚上げ合意」がなされてきた。そのため日本は2000年の日中漁業協定の取り決めの通り、自国の漁船を取り締まり、相手国漁船に関する問題は外交ルートでの注意喚起を行っていれば問題はなかった。しかし、日本は2010年の菅内閣の閣議決定で、「尖閣諸島に関する我が国の立場は、尖閣諸島をめぐり解決すべき領有権の問題はそもそも存在しないというものである」と姿勢を変え、棚上げ合意を一方的にないことにし、国内基準で中国漁船の取り締まりを始めた。海上保安庁の巡視船が中国漁船を逮捕するようになり、中国の脅威が煽られたことで、緊張が人為的につくられてきたのである。
「ウクライナでは2004年と2014年に政権転覆が起きています。米国が、間接的に市民デモを暴力化させるなどにより政権を転覆させる戦略を取り、親米政権をつくったのです」という植草氏の発言も重要だ。
ウクライナ問題も同じように、親米政権に反対する地域で起こった内戦を収めるために、それらの地域に高度な自治権を与える「ミンスク合意」がなされた。しかし、ウクライナがミンスク合意を一方的に破棄したため、ロシアとの緊張が高まり戦乱が起きた。つまり、米国が戦争を望んだためだ。「ここでも戦争が人為的につくられたことを認識し、日本が平和を維持するためには近隣諸国との相互尊重、相互理解を築くことが大切だと気づくことが必要です」という植草氏の言葉に耳を傾けるべきだろう。
東アジアでの「台湾有事」のストーリーもつくられたものである。日本は1972年の日中共同声明で中国が台湾を領有することを実質的に認めたが、米国は1979年に「台湾関係法」を制定し、台湾を支援できる可能性を残してきた。その結果が「台湾有事」の四文字となっている。
日本の政治はアベノミクスを始め、グローバル巨大資本の利益を成長させる戦略であり、米国の巨大資本の意向によって世界が再編されている。これが現実である。「米国は米国の価値観を認めない国に対して武力を行使していますが、民主主義とは本来、異なる価値観や哲学を認めるものです。米国は武力制圧した国に対しては市場経済化を行い、巨大資本が入り込んで利益を吸い上げますが、その対象に日本もなっています」という植草氏の言葉は貴重である。
植草氏は、野党が分断されると与党が勝ってしまうため、『隠れ与党勢力』である連合と手を組まずに野党が1つになって共闘し、新しい政治の流れをつくることが必要だと語った。これについては、稿を改めて述べたい。
(つづく)
【石井 ゆかり】
法人名
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