イタリア、極右の女性首相誕生か?(前)
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ディサント(株) 代表取締役
ディサント・ダニエレドラギ首相辞任で9月25日に前倒し解散総選挙
イタリア中央銀行総裁、欧州中央銀行(ECB)総裁などを歴任してきたマリオ・ドラギ首相による大連立政権が崩れたイタリアで、9月25日に解散総選挙が行われる。EUで3位の経済規模を持ち、G7・NATOメンバーでもあるイタリアだが、長年の政治不安で有権者が極めて流動的になっており、今回の選挙では、極右政権の誕生とその女性党首の首相就任が有力視されている。
3代連続での「選挙で選ばれていない非政治家出身の首相」に終止符
イタリアでは、第1・2次ジュゼッペ・コンテ内閣(2018年6月~2021年2月)からマリオ・ドラギ内閣(21年2月~22年9月)と3代連続で「非政治家」(選挙で選ばれていない)首相が続いていたが、その流れにはここで終止符が打たれる見込みだ。
「政治家ではない首相」という概念は日本では一般的ではなく、いったいどのような仕組みになっているのかという疑問を持つ方も多いかもしれない。
イタリアで近年、非政治家出身の首相が続いたのには理由がある。圧倒的支持を集める政党不在の不安定な連立与党政権が続き、連合内不均衡を避けるために、非政治家出身首相により、与党内のバランスを図ってきたのだ。つまり、連立政権として特定の党に所属しない高度な知識や技術を持つテクノクラートを首相に擁立し、イタリア大統領により任命を受ける(イタリアでは首相は閣僚評議会議長で、大統領が首相任命権を持つ)という形で非政治家首相が誕生してきたというわけである。
21年2月、前政権の崩壊に際し、新型コロナによる大打撃を受けたイタリア経済を立て直すために新しい絶対的なリーダーが必要だったセルジョ・マッタレッラ伊大統領は、かねて「政治に興味がない」ことを公言してきたドラギ氏に直々に首相就任を打診した。
ECB総裁(11年11月~19年10月)時代、ギリシャを元凶とする欧州ソブリン危機から、その後何年も後を引いた低成長・低インフレに際し、量的緩和政策やマイナス金利、長期資金借換オペレーションなどの金融処置を投じ、ユーロ経済圏を救った「スーパー・マリオ」として知られるドラギ氏。
祖国の未曽有の危機のために首相就任を承諾した彼は、かつてない規模の支持を集め、6党からなる挙国一致内閣とも呼ばれた大連立政権を実現(21年2月)したのだったが、新型コロナの感染が落ち着くにつれ、与党内の分裂を抑えることが徐々に困難になり、22年7月に辞任することとなった。
23年春の総選挙を前倒し、議員年金はちゃっかり確保
筆者は、ドラギ首相が辞任したとしても、解散総選挙になることはおそらくないだろうと見込んでいた。国会議員の任期を満了すると、議員年金を受け取ることができるが、18年6月の選挙で議会第1党となった左派ポピュリズム政党の「五つ星運動」など急成長した政党をはじめ、前回新人として当選した多くの議員にとって、23年春の任期満了を待たずして解散する事態は何としても避けたいはずだと思っていたからだ。
しかし、その予想は裏切られた。議員年金受給の権利は、正確には就任後「4年6か月と1日」を過ぎると発生する。それが、何と22年9月24日!その翌日に解散総選挙が行われることになったのである。
Covid-19からの大規模な復興計画の策定だけでなく、ウクライナ戦争によるインフレとエネルギー危機、スタグフレーション、信用不安などの課題を抱えるイタリア。国際社会からのドラギ氏への信頼が大きかっただけに、新政権の行く先が注目されている。
(つづく)
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