2024年11月21日( 木 )

社員・協力会社一丸となって、押し寄せる工事の波を乗りこなす(後)

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中村工業(株)
代表取締役 中村 隆元 氏

 今年4月、創業117周年を迎えた躯体工事業の中村工業(株)。天神ビッグバンや博多コネクティッドを始め、長崎の駅前再開発、諫早ソニーN-TEC新築工事など、九州圏内では複数の大型開発が進められている。建設業界は盛況を博しているが、一方で恒常的な人手不足の状態が続いている。とくに最大規模である熊本の半導体工場新設は9月から来年いっぱいにかけて躯体工事が佳境を迎えることで、今までにない人手が必要となる。大規模な工事や重なる工期などへの課題や今後の見通しについて、地場専門工事トップの中村工業・代表取締役・中村隆元氏に話を聞いた。

地場専門工事トップとして、
物をいえる土壌を醸成する

 ──日本の建設業界はピラミッド構造になっているため、今後の課題は山積みですね。

 中村 そうですね。もっと専門工事業者側がしっかりと物をいえるようなかたちにしていかなければならないと考えています。良い例を挙げると、海外の建設業界の構造ですね。海外では発注者が発注するタイミングで、施工と設計を分けるため、ゼネコンは小規模なものが多く影響力も低いのです。さらに労働組合が全国規模で組織化されていることも日本の建設業とは違います。だからこそ、専門工事業者側が物をいえる土壌ができているのだと思います。

中村工業(株) 代表取締役 中村 隆元 氏
中村工業(株)
代表取締役 中村 隆元 氏

    土木建設業において、ゼネコンと専門工事業者のバランスがとれていることでお互いに長く取引を続けていけるのではないでしょうか。物をいえるかたちにするためには、まずは信用されることが一番大切だと思います。信用とは安全が一番ですが、雇用の条件なども大きく左右します。安全な工事を行えるのも人材がいるからこそで、加えて、工期の遵守やさまざまな工事に対応できる機械をもつことができて、初めて物をいえるようになります。これは私の代の最大の課題だと認識しています。

 必要とされる会社であり続けるためには、世の中や元請から何を求められているのかを常に考えることです。こうした姿勢が、当社が117年間続けられてきた最大の要因だと思います。

 ──たしかにその通りだと思います。物をいうようになるためにはしっかりと信頼関係を築くことが大事ですね。そのためには人材確保や外部企業との協力体制などが重要になってくるでしょう。

 中村 現在、各業界での協力体制の構築に注力しています。たとえば、プレストレスト・コンクリート業界では最大手の(株)ピーエス三菱さんと今後についていろいろと話をしています。お互いの計画力や全体的な施工をしていく方のマネジメントと、ピーエス三菱さんの図面と製造に特化した部分をミックスすれば、ゼネコンさん側からしてみるとすごく手がかからないというメリットにもなります。以前から、多能工を育てるようにとずっと言われていましたが、それは簡単ではありません。今は一企業が1人勝ちするという時代でもありませんので多能工を育てるよりもタッグを組める企業と一緒に、それぞれの持ち味を生かした体制を築いていきたいと考えています。

中村工業(株)

 ──建設業界は慢性的な人手不足といわれていますが、貴社ではどのような対応をされていますか。

 中村 前述の通り、大型工事が続いているため、人手不足は感じています。ただ、今の建設業界はほかの産業と比べてどうなのかという意識が欠如していると思います。地場同業者同士との比較も大事だとは思いますが、人の雇用に関する部分でいうとほかの産業のことを知らなければ勝負になりません。

 また、外国人実習生や女性社員の活用も大事になっています。外国人実習生は今年1期生が帰国し、現在6人雇用しています。夕食付きの寮を新設しており、非常に喜んでくれています。帰国した子たちから「(中村工業に)帰ってきたい」という声を聞いたときは、本当に嬉しかったですね。私個人としては、できることなら日本人と同じ終身雇用を、と考えています。そのため、「処遇面で何か不足している点はないか」「おかしなことがあったらすぐに言ってきて」と、都度聞くようにしています。女性社員についても同様で、現場でしっかりと活躍してくれています。5年目の女性とび職の社員が、アイランドシティの現場で職長を務めています。工場建設の現場でも、女性管理者を配置しました。

 国土交通省が発表している19年時点の建設業労働者の年間賃金総支給額は約462万円、製造業は約479万円、全産業では約560万円と平均年収に開きがあります。そこの差を埋めつつ賃金水準をもっと上げていかなければならないと思っています。

 そのため、当社では今年の春から初任給を上げて採用活動を行いました。とくに高卒の雇用については、今までは製造業との取り合いでしたが、近年ではゼネコンさんも採用活動に参入してきました。加えて近年、九州では工業高校生の進学率は50%を超えているのが現状です。少子化のなか、大学側も生徒獲得に必死になっています。「募集しても来ない」と言っている企業もいますが、高校や専門学校へ定期的に行って求職状況のヒアリングをしたり、こちらから会社概要をプレゼンしたりするなど、本当に危機感をもって動けている経営者は少ないと思います。直接モノづくりに携わっている専門工事の魅力を、どのように若い人たちおよび保護者の方々に見せていくかも、真剣に考えていかなければなりません。そのことも人材確保の大きな課題といえるでしょう。

(了)

【内山 義之】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:中村 隆元
所在地:福岡市中央区舞鶴3-2-6
設 立:1947年5月
資本金:6,000万円
売上高:(22/3)96億1,732万円
URL:https://nakamura-k.com/


<プロフィール>
中村 隆元
(なかむら・りゅうげん)
1975年1月生まれ、福岡県春日市出身。中村学園三陽高校、福岡建設専門学校卒。学生時代はラグビーに勤しむ。2015年に中村工業(株)の代表取締役に就任。趣味は水泳、マラソン、仲間との酒飲み。

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