2024年11月25日( 月 )

「中国式現代化」をはたし、強国となる3つのステップ

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中国 都市 イメージ    習近平総書記は第20回全国代表大会での政治報告で、「中国は現在、2つの百年が交差する位置に置かれている。ゆとりのある社会から現代化大国、現代化強国となる新しい段階にあり、百年間で強国になるという目標に邁進する大事な段階である。中国共産党のこれからの中心的任務は、全国各民族人民を団結、指導して全面的な社会主義現代化強国とし、2つ目の百年の奮闘目標を実現し、中国式の現代化により中華民族の偉大な復興を全面的に推進することだ」と指摘した。

 習総書記はまた、「社会主義の現代化強国を全面的に築く上での全体的な戦略は2段階に分けられ、2020年から2035年までが社会主義現代化の基本的な実現、2035年から今世紀半ばまでが力強い民主文明で調和のとれた社会主義現代化強国の形成である」と述べた。

 これから2035年までは大切な15年間である。この15年を3つの段階に分けて、中国式の現代化強国を実現することになる。

第1段階:2025年までに中所得国を脱却して高所得国の仲間入りをはたす

 2021年から2025年は「第14次五ヵ年計画」期間であり、1人あたり国民所得を2020年の1.13万ドルから2025年には1.4万ないし1.5万ドルに伸ばす。急成長(6%ないし7%)は望まず、この5年間で毎年5%ずつ成長すれば複利でおよそ30%程度の成長が果たされ、2025年には1人あたり国民所得が1.4万から1.5万ドルに達する。

 これは質的変化として、どのような意味があるかを考える。世界銀行の最新の所得基準を見ると、1万2,535ドル以上が高所得国、富裕社会である。中国は2020年の1人あたり国民所得が1万500ドルで、中の上のレベルであるが、あと5年経って2025年には少なくとも1.3万ドルを超え、中所得国を脱却して高所得国の仲間入りをはたす。

 現在、世界には富裕な国・地域が80カ所あり、内訳はヨーロッパ37カ国、北中南米が21カ国、アジアが14カ国、オセアニアが7カ国、アフリカが1カ国である。またその人口はおよそ11億人で、北米~南米が最も多く3億人あまり、日本が1億2,500万人、ヨーロッパが4~5億人で、これらを合わせて10億人、その他の国々を合わせて計11億人ほどが「富裕人」である。ここで14億人を有する中国が中所得国を脱却すれば、富裕人つまり高所得国の人口が一気に2倍以上に増え、計25億人のうち中国人が55%前後となる14億人を占める。すなわち、世界の富裕人の中身が変わることになり、改革開放から40年余りを経た中国が高所得国となり、世界の高所得国の人数が2倍以上になるという、画期的な意味をもつのである。

第2段階:2030年ごろまでに、GDPでアメリカを超えて世界一の経済大国となる

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 中国経済は今後10年、年平均で少なくとも5%前後の成長率を維持すると見られ、2030年には物価がそのままとしてGDPは160兆元(約3,251兆円)以上となり、インフレ要因を加えると180兆元(約3,658兆円)、ドル換算で約28兆ドルとなる、一方アメリカの成長率は年間2%前後と見られ、10年後にはおよそ28兆ドル前後となる。中国は2030年までの「第14次五ヵ年計画」期間に、GDPでアメリカを追い越して世界一の経済大国となる。1人あたりGDPは高所得国のなかで中程度ではあろうが、規模はアメリカを超えるという、その後の世界に甚大な影響を与える画期的な出来事となる。

 中国のGDPについて、経済史の研究家であるマディソン氏によると、清朝の康熙帝から乾隆帝の時代は世界の40%を占め、1820年も32.9%で世界トップであったが、近代に入り、さまざまな事情で1980年にはわずか1%に下がり、当時のオランダと同程度になった。2020年には17%であり、今後10年間で25%前後に到達すると思われる。

 そのころ、つまり2030年までにはアメリカを抜く。現在、世界一の経済大国であるアメリカは2020年のGDPが20.93兆ドルで、中国はその70%前後である。これから毎年5%の成長を10年近く維持できるとみられ、2030年にはほぼ確実にアメリカを抜いて世界一になる。つまり200何年かぶりに経済規模が1位に返り咲くという、これもまた極めて画期的な意味をもつのである。

第3段階:2035年までに中等先進国となる

 高所得国とは国民1人あたりGDPが4万ドル以上であり、現在はドイツ、フランスなどヨーロッパ各国が4万ドル以上、アメリカが5万ドル以上となっている。また中等先進国は平均2~4万ドルである。中国は2021~2035年の15年間、人民元の価値が変わらないとすれば、年平均4.5%の成長率で2倍増となり、ドル換算で1人あたりGDPは2020年の1.13万ドルから2.2万ドルに増える。

 すなわち、2035年まで高所得国の中ほどである中等先進国のレベルに達するという長期目標をはたし、1人あたりGDP2.6~3万ドルも手が届く範囲である。以上の3つの段階が、現代化強国を目指す中国の戦略的計画である。

 これから15年間で中国が高所得国となり、経済規模が世界一となり、1980年代に定めた2050年までの目標を15年前倒しで達成する、と考えれば、この15年間は極めて重要なものとなる。

 以上の試算を踏まえて考えると、習近平政権が長期的に安定すれば、この目標達成もぐっと現実に近づいてくると言える。


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