韓国経済ウォッチ~注目を集めるフィンテック(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
それでは、具体的にフィンテック(FinTech)には、どのようなメリットがあるだろうか。
まず、決済のケースを考えてみよう。クレジットカードで決済する場合には、いくつかのステップが必要になる。まずお店にはクレジットカードの情報を読み取る装置が置いてあり、そこからVANという回線業者に情報が送信される。また回線業者は、その情報をクレジット会社に送る。クレジットカード会社では、送られてきた情報を顧客情報と照会した後、お店に決済承認の情報を送ることになる。この決済の流れには、回線業者とクレジットかカード会社が介在しているため、回線業者には回線使用料を、それから、カード会社にはカード利用の手数料を支払うことになる。すなわち、決済が行われるたびに、このような会社に手数料を払うことになる。
しかし、モバイル決済の場合には、お店にカードリーダ機器などの設置もいらなくなるうえ、回線会社の回線も必要なく、モバイル会社の無線網を使ってクレジットカード会社に情報を送ることになるので、コストがぐっと下がることになる。
このように、コストの面だけでなく、クレジットカードをいつも持参する必要もなく、簡単にかざすだけで決済ができる利便性があるので、今後、この決済方式はますますユーザから歓迎されることが予想される。それから、消費者金融の分野においてもフィンテックは大きなポテンシャルがある。
個人がお金を借りるとき、今までは、クレジットカードのキャッシングサービス、銀行、消費者金融を利用してきた。だが、それら店舗と社員というコストを必要としている既存モデルは、どうしても金利が高くならざるを得ない。しかし、フィンテックを活用したオンラインでの資金需要のマッチングは、貸す側にとっても、借りる側にとってもメリットになるようなサービスを提供できる。それでは、フィンテックには、課題はないだろうか――。
まず、この分野は通信を使うため、ハッキングのリスクが付きまとう。お金に関する大事な情報がやり取りされるその過程で、そのお金を奪い取ろうとする試みはよく起こっている。実際、紛失した他人のクレジットカードを使って不正決済を行うなど、セキュリティ関連のトラブルも多く報告されている。また、法律の整備問題もある。フィンテックは新しい分野だけに、まだ法律が追いついていない。規制を撤廃すればするほど、いろいろなサービスが提供でき、ユーザのメリットは大きくなるが、現実はまだそうなっていない。
アップルやサムスンのような会社がクレジットカード会社の役割を兼ねることができれば、もう1つのプロセスが省かれて、もっと簡便になる。しかし、既存業者を守るためのいろいろな規制があり、技術的には可能でも、まだサービスを実現できないという現実がある。韓国では、このビジネスの可能性にいち早く目覚め、この産業を育成するために、政府を中心に金融機関、非金融の企業も巻き込んで、技術開発に取り組んでいる。
とくにセキュリティ分野などを中心に、この分野の成長性は大きく、韓国経済に大きく貢献する可能性を秘めている。(了)
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