今後10年の中国経済の行方を探る 市場の全国一本化で経済の大変貌が始まる
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第20回共産党大会を終え、中国経済が大変貌へと歩み始めた。
以下の2点がその前触れである。
まず1つは、国の安全に関わる大手IT企業3社が「合弁会社」となるかたちで、「国の支配」が実現しようとしている。
中国の市場監督管理総局は10月27日、国有の通信会社「チャイナユニコム」と中国最大のSNS「WeChat」を運営している「テンセント」による合弁会社の設立を認可したと発表した。また11月1日、同じく国有のチャイナテレコムがアリババと、チャイナモバイルが京東とそれぞれ本格的なパートナー事業を実施する協定を結んだ。
この結果、国有大手の通信会社3社が民間のIT大手3社の経営に本格介入することになる。
2つ目は、「供銷社」が復活したことである。供銷社とは、計画経済を実行していた20世紀に、農村部ほか中小都市へ物資を供給する手段であり、唯一の物資入手ルートとなることもあった。当時、民間経済はすでに消滅し、個別での経営もほぼ失われ、農村や町村部では大事な生活物資や生産財を手にするには供銷社に頼るはかなかった。塩やマッチを買うのに山道を10キロ以上行くことも当たり前だった。供銷社は「売る」だけでなく、農産物の買い上げや委託サービスなど「購入」や「代理販売」も手がけていた。つまり計画経済の時代、政府による経済統制の大切な担い手であり、国の底辺層に浸透する存在だった。
1980年代に入り、改革開放が進むにつれて民間経済が発達し、外国企業の進出もあってスーパーやデパートなどが次々と現れ、供銷社は次第にフェードアウトしていった。
ところが最近、復活をはたしており、国の機関であるばかりか国有企業ともなっている。とくに顕著なのが湖北省であり、すでに1,373件の供銷社が存在し、社員数は45万人を数える。生活エリア全体および町村部までカバーするとも言われている。
供銷社は今後、中国式現代化、地方の振興、市場の全国一本化、国内経済の循環、共同富裕、食料の安全保障と備蓄、緊急時の一括調達、質の高い成長を確保、といった8つの役割を担っていく。
以上をまとめると、民間のIT企業の統制と「供銷社」の復活は、共産党大会後の「ニューエコノミー」への第一歩である。
商品の「生産販売」という物流の大動脈を早期に国の手元に戻し、小売業の仕組みを立て直すことで、国が支配する「市場の全国一本化」を築き、経済を回して「共同富裕」形成への道を探ることが中国政府の大きな目的であると想像できる。
中国は今、本格的な変貌をしようとしているのだ。
市場の全国一本化、それはビッグデータやデジタル通貨など技術の成長がもたらした必然的な結果であり、極めて公平で理にかなった状態であるうえ、最も幸せを感じられる社会の姿と思われる。このような技術手段がなかったころ、政府は本当の市場ニーズをつかむことができず、それぞれが個別に営業してその背後で取りまとめるほかなく、経済を回す上で生産過剰などのロスが大変深刻な状態であった。
これはつまり、「効率」と「公平」を両立できず、「効率」が「公平」より上位にあったということである。なにしろ経済の整備が最優先だったのだ。
しかし今は違う。政府はテンセント、アリババ、京東というIT大手3社を支配することで手にしたビッグデータにより市場ニーズを正確につかみ、それを細かく分けられるようになって、とりまとめや調整をじかに行える。バラバラに営業するよりずっと効率的で、「効率」と「公平」の両立が実現してかたちの整った経済体制が出来上がるうえ、中国式の「デジタル経済」も生まれ出る。
この結果、経済は全国一本化され、都市部と農村部、生産と販売が上下一体化することになる。
「インダストリー4.0」では、「これからの社会は、すべての商品が生産される前に消費者が誰か分かるようになり、注文を受けての生産となる」といった流れを説明している。つくってから買い手を探していたゆえに過当競争(価格競争)や無駄遣い(生産過剰)が起きていたころとまったく違うものである。
「オンデマンド生産」をすれば、次第に「オンデマンド分配」へと移行していく。生産力が充足すれば製品の多くは注文生産となるので、消費者のニーズをつかむことができ、手元に渡った物が一番欲しかった物、ということになりやすい。
オンデマンドで生産と分配される時代、これがマルクスのいう「共産主義時代」の新しい実現である。
市場が全国一本化すれば、一銭単位で行方を追跡できるほか、1人ひとりの生み出す価値が正確に記録され、あらゆる行動が足跡を残す。つまり創造性を発揮して価値を生み出せばいいわけであり、こうしてそれぞれが持ち場で力を出すようになる。
中国経済は今、新たなオペレーションシステムに切り替わろうとしているのだ。
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