武雄市長に4億円請求命令の背景(1)
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佐賀地裁は11月18日、佐賀県武雄市に対して、市長に約4億円を請求するよう命じる判決を言い渡した。裁判は、市が議会の議決を経ずに民間企業と契約を結んだのは違法だとして、住民らが訴えていたもの。判決は原告の訴えを認め、市の敗訴となった。自治体首長が4億円という多額の事業費の負担を命じられるという事態は、なぜ起きたのか。背景を追うと、地方が抱える防災問題、議会運営、業務委託などが絡まった地方行政の現実が見えてきた。
市長選挙と判決
任期満了にともなう武雄市長選が、12月11日告示・18日投開票の日程で行われる。
12月8日時点で立候補を表明しているのは、現職で3期目を目指す小松政氏(46)と、新人の宮本栄八氏(67)、いずれも無所属の2人。
現職の小松氏については、2020年7月に市が市内のケーブルテレビ会社と結んだ防災情報配信システムの構築業務委託契約について、議会の承認を得ずに公金支出を行ったことは違法だとして、20年12月に市議を含む市民6人が住民訴訟を起こしている。
市側は、本件予算が同年3月の定例市議会で議決されていることから、個別の議決は必要ないと主張していた。
佐賀地裁は今年11月18日の判決で、原告の訴えを認め、市に対して約4億円を市長に請求するよう命じた。
敗訴判決を受けた小松市長だが、「契約した防災システムは市にとって有益な部分もある」として、同月30日に福岡高裁に控訴した。控訴審では「損益相殺」を求めるとしている。損益相殺とは、違法行為で損害が生じても、同じことが原因で利益を得ていれば、その利益を損害賠償額から控除することをいう。しかし、一審判決はこの点についても触れており、市の利得発生を認めていなかった。
市が結んだ契約の金額は、市内約1万5,000世帯に防災情報を配信するシステムの構築業務を委託する費用として約5億8,000万円。設置事業は2021年に完了し、設置台数が当初計画より少なく約1万戸の設置となったことから、事業費は約4億円になっていた。
判決の請求命令も約4億円であり、要するに市側の全面敗訴である。市長が契約費用の全額負担を命じられるという判決は全国に衝撃を与えた。どうして市は議案提出という議会対応の基本を怠って、このような事態を招いてしまったのか。
武雄市には今年、長崎と結ぶ西九州新幹線が開通した。駅の名前は武雄温泉駅。風光明媚な御船山や、山々に囲まれた豊かな田園をたたえる落ち着いた土地だ。また、TSUTAYAと提携した武雄市立図書館もかつて話題になった。
その街で何が起こっているのか。背景を追った。
【寺村 朋輝】
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