武雄市長に4億円請求命令の背景(3)
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佐賀地裁は11月18日、佐賀県武雄市に対して、市長に約4億円を請求するよう命じる判決を言い渡した。裁判は、市が議会の議決を経ずに民間企業と契約を結んだのは違法だとして、住民らが訴えていたもの。判決は原告の訴えを認め、市の敗訴となった。自治体首長が4億円という多額の事業費の負担を命じられるという事態は、なぜ起きたのか。背景を追うと、地方が抱える防災問題、議会運営、業務委託などが絡まった地方行政の現実が見えてきた。
契約内容は議会で未承認
防災戸別受信機の設置については、市議会で大きな問題となった。受信機配布が始まった直後の20年9月の定例市議会で複数の議員が取り上げて市へ質問している。
会議録によると、ある議員は、地元メディアで市長が民家を訪ねて戸別受信機を渡した旨の報道を見て、この件が具体的に進行していることを初めて知ったという。3月の予算後に、契約内容についても、どのような受信機を手配するのかについても、市から議会に対する説明も議案もなく、未承認のまま進行していることを指摘したのだった。さらに議員は、戸別受信機は無線になるものとばかり思っていたとも指摘した。
これに対して市担当者は、何度か書面は配布していたとするも、議会に説明するタイミングがなかったとして、書面による概要説明のみで詳しい説明がなかったことを認めている。そして無線ではなく有線となった経緯については、市が事業者の公募を行い、応募した2社を審査したところ、既存の情報発信ツールとの連携を含めた提案を行った業者を、市が総合的に評価し委託先として決定したこと、その委託先が提案したものが有線であったが、総合的に市の目的を達成できるものとして有線に決定したと説明している。
小松市長も答弁し、担当者から報告で有線と聞いたときに違和感をもったと率直な感想を述べたものの、審査の経過を聞いて最終的に納得したと語っている。
業務委託契約だから議決は不要?
なぜ議会に諮らなかったのかという点について、市は、3月に予算として承認された業務委託契約なので議会の承認必要事項には当たらないと、議会で答弁を繰り返した。
どういうことかというと、武雄市条例では、地方自治法に基づいて、1億5,000万円以上の工事・製造の請負、あるいは2,000万円以上の動産等の買入れを議会の議決が必要な契約として規定している。つまり、業務委託契約は上記の、工事・製造の請負にも、動産等の買い入れにも当たらないので、議決は不要というのである。
しかし、市の担当者の契約についての説明はこうだ。本件のシステム構築業務委託契約は構成要素として、①システムの構築②機器の調達③機器の設置を含んでいる。それぞれが委任、売買、請負にあたると説明した。つまり、市担当者も②③については議決が必要な売買と請負にあたると見なしているのだが、続けての解釈がおかしい。市の担当者は続けて、この契約は、委任にあたる①システム構築が核心を占める業務であって、②機器の調達および③設置はそれに付随した業務にすぎないから、全体として議決が必要な契約には当たらない、というのである。
単純に単品価格と設置戸数から計算しても、戸別受信機価格(9,460円)×設置戸数(約1万)=約9,460万円となり、「2,000万円以上の動産等の買入れ」にあたる。まるまる委託費用に含まれるから議決事項に当たらないといえるのか。しかも別の答弁では、戸別受信機は動産であり所有者は武雄市であることも認めているのである。市の有形減価償却資産にも、総額約5億8,000万円、耐用年数10年、価格は9,460円(税込)として計上されていることが答弁からうかがえる。どうみても市の説明には無理がある。
また市の担当者は、本件を顧問弁護士に確認したところ、本契約は財産の取得には当たらず、システム構築と一体の業務委託契約として確認が取れたという。という具合に、とにかく市は、これは業務委託契約であるから議決は不要で押し切りたい様子なのだ。
ところがこれについては、『佐賀新聞』(11月23日付電子版)によると、顧問弁護士は市側の相談に対して、「この契約には議会の議決が絶対に必要」と返答したと伝えており、両者の言い分が食い違っている。
(つづく)
【寺村 朋輝】
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