2024年11月22日( 金 )

ザル法「救済新法」成立 やっている感出しただけの与野党4党の大罪

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 12月10日閉幕の臨時国会で、被害者救済法案が与野党4党の賛成で成立したが、旧統一教会問題に長年取り組む「全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)」は新法成立直後の会見で「ないよりましという程度のものであって、これで救済の幅が広がったとは到底いえない」(山口広代表世話人)と実効性に疑問符をつけた。旧統一教会問題を半世紀追い続ける中村敦夫元参院議員も「救済法案は『お粗末過ぎる』」と銘打った『朝日新聞』(12月8日付)の記事で批判した。

「『やっている風』を示すために政権はその場しのぎの法案を出し、野党も反対すれば無責任といわれるのを恐れて妥協した」
「旧統一教会は40年ほど前からマインドコントロールを駆使して霊感商法などで収益を得ていた団体なのに、今さら『配慮義務』を求めてどうするのか。『十分に』と加えてもなんの効果もない。」

 安倍元首相銃撃事件から約半年が経っても、韓国教団への国富流出(日本人の高額献金)をほとんど阻止できないお粗末なザル法しか産み落とせない国会の機能不全ぶりが露呈。「これからも高額献金集めができる」という旧統一教会の高笑いが聞こえそうだ。その“A級戦犯”はもちろん実効性に乏しい政府案に固執した岸田政権だが、不十分な修正のままで一転して賛成した立民と維新も“共犯者”といえる。

 しかし泉代表には、茨城県民に大嘘をついたことにもなる“密室談合決着”への後ろめたさはまったくなかった。

立憲民主党    12月8日の本サイト記事『救済新法で泉代表の信頼失墜を招いた、維新共闘派の立民幹部』で紹介した通り、賛成に回る直前まで立民は、“被害者救済目線”を貫いていたが、突如、方針転換をした。当初は被害者に寄り添って、国対ヒアリング(旧・野党合同ヒアリング)に被害者や全国弁連の弁護士を招いて意見聴取しながら政府案の実効性をチェックするなどし、泉代表自身も12月2日に茨城県議選の応援演説でこう訴えていた。

「岸田さん、茂木さんがどれだけ譲ったのかではない。被害当事者が救われる法案なのかが一番です。」
「どの党が賛成する反対するという問題ではなくて、困っている方々に寄り添って戦い抜いていきたい。」

 ところが、4日後の12月6日、自民の茂木幹事長と立民の岡田幹事長が6日夕に面談、政府案の配慮義務に「十分」を入れることで折り合い、賛成に回ったのだ。茂木幹事長が「十分」文言の付加で譲歩し、維新が賛成に回りそうなので立民も共闘重視で足並みをそろえたとしか見えないのだ。

 そこで会見で泉代表に「茨城県議選で訴えていたことと食い違うのではないか。茨城県民に嘘をついたのに等しい気がする。」「政策(法案)よりも政局(維新との共闘重視)を優先した印象を受ける」と聞くと、次のような回答が返ってきた。

「横田さんの観点、意見はよく理解した。一方で全国弁連の皆さんとも我々の思いは一緒だと思っている。国会のなかでどこまで勝ち取れるのかを常に考えながら、どれだけのものを勝ち取れるのか。そこについて最大限努力をしてきた。」

 しかし、先に述べたように全国弁連は国会での参考人質疑でも新法成立後の会見でも実効性に疑問符をつけていた。立民は土壇場で“被害者救済目線”をかなぐり捨てたのに、全国弁連と思いが一緒のはずがないのだ。

 大嘘をついたのは泉代表だけではない。国対ヒアリングで司会役を務めた山井和則衆院議員も、12月2日、全国弁連の山口代表世話人らの新著『統一教会との闘い』の出版記念集会で国会情勢について、2つの選択肢を示していることを報告、野党の抜本的修正を与党が飲んだ場合は会期内成立もあり得るが、飲まない場合は会期延長を求めていたのだ。

「(会期延長の場合は)基本的には『衆議院で30時間の審議をしてください。被害者や弁護士を招いて参考人質疑をしてください。必要であれば、問題のある団体の視察や調査もしましょう。』『戦後の宗教政策の歴史的な大きな曲がり角なので、じっくり丁寧に審議をしましょう』と(与党に)提案しました。」

 合わせて山井氏は会期内成立で賛成する前提となる抜本的修正事項をあげ、与党側にボールがあるとも強調していた。「『配慮義務』という非常に弱いものを『禁止』にするとか、『必要不可欠』を『必要』にして対象を広げるとか、抜本的に被害者救済につながる修正をするのであれば、会期内に成立させることもやぶさかではないと言っている。」

 茨城入りした泉代表と同じように山井氏も“被害者救済目線”を貫くと宣言したのだが、これも6日の“談合密室決着”で覆ることになった。繰り返しになるが、配慮義務が禁止になる抜本的修正抜きで、入っても大差のない「十分」文言の付加で立民は賛成に回ったのだ。党内の国会議員から「『一歩前進だけれども不十分なので反対』といえば良かった」という疑問の声が漏れ聞こえてきたのは当然のことだった。

 これについても会見で泉代表に、「山井さんは『十分な野党案を飲み込まなければ、(国会)延長をして30時間の審議時間を確保する』ということを言っていたのに、これも日和ったとしか思えない。延長して審議すべきだったのではないか」と聞いたが、非を認めない回答しか返って来なかった。

「日和るも日和らないも相手がある交渉、協議なので、『じゃあ』と言ってテーブルを叩いて退出すれば、何か得られるものがあるのか。今後の協議がどうなるのか。そういったことも総合的に考えて我々は行動している」(泉代表)。

 納得しがたい主張だった。先の立民議員のように、「一歩前進だが、まだ不十分なので反対」という立場を取ることが、なぜ今後の修正協議の場を失うことになるのか、まったく分からない。全国弁連の主張に基づいた“被害者救済目線”で判断しないと、韓国教団への国富流出(日本人信者の高額献金)を阻止できないのは明らかではないか。

 ザル法成立で事足りたのは、旧統一教会とズブズブの関係の自民党や高額献金規制を避けない公明党であるが、それに加えて、与党と「やっている感」演出で足並みをそろえた立民と維新の責任も重大なのだ。与野党4党の“密室談合決着”に騙されてはいけないのだ。

【ジャーナリスト 横田 一】
 

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