福岡市のストック活用と建設業許可の自主廃業
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福岡市の入札結果を日々確認するなかで、2022年とくに目にとまったのは、市営住宅の大規模改修や建替え工事だった。以前記事として取り上げたことで、記憶のなかに色濃く残っていたことも一因だろう(市営住宅約3,500戸分を建替え、資産価値の維持・向上へ)。
市営住宅ストック総合活用計画
SDGs(持続可能な開発目標)が国際社会共通の目標として掲げられて久しい。福岡市では、老朽化が進む市営住宅の大規模改修や建替えを促進する「市営住宅ストック総合活用計画」を前期(2025年度まで)と後期(30年度まで)に分けて実行中。大規模改修や建替え工事によって老朽化が進む市営住宅の機能更新を行うことで、維持保全費をはじめとする市の長期的な財政負担を軽減。あわせて、市の資産価値向上と、幅広い世帯への良質な住環境の提供につなげる。
同計画の達成に向けた関連工事の発注も旺盛で、建築・解体工事だけでも相応規模の予算が組まれている。19年9月以降の発注工事のなかで、落札額(税別)1億円以上の主な案件は以下の通り(表①参照)。
これは全案件の一部に過ぎないが、それでも落札額(同)の総額は78億円超におよぶ。住民の生活利便性・市の資産価値の向上をはじめ、建設業者にとっては受注拡大の好機となることから、利益の循環による地元経済活性化への寄与も期待される。
建設業許可の自主廃業続く
発注期間を19年9月以降からにしたのは、落札者のなかに(株)西中洲樋口建設の名前を見つけたからだ。同社は前代表が刑事罰を受けたため、18年5月に建設業許可の自主廃業を行い、その後同許可を再取得。19年8月に福岡市の入札資格Aランク(建築)に復帰していた。
Aランクへの復帰により、再び市発注の予定金額3億円以上の工事を受注できるようになった同社。Aランク復帰後の主な落札案件は以下の通り(表②参照)。JV受注とはいえ、大型案件にも携わっており、落札額(税別)の総額は58億円超にのぼる。また、福岡県発注の「糸島高等学校定時制棟ほか改築ほか工事(落札額(同):1億8,306万4,000円)」、国(気象庁)発注の「福岡管区気象台衛生設備改修工事(同:1億7,400万円)」など、単独受注も少なくない。すでに建設業許可の自主廃業の影響は、皆無と言っていいだろう。
日本電気(株)(NEC)やアイディホーム(株)(飯田グループホールディングスの1社)は、それぞれ元社員、元役員が刑事罰を受けたため、22年、建設業許可の自主廃業を決定した。
建設業法第29条にある通り、本来であれば建設業許可の取り消し処分となり、5年間許可の再取得ができなくなる事態だ。しかし、建設業法はあくまで許可業者を対象としている。
自ら廃業し許可業者から外れることで、許可の取り消し処分を逃れることができる。その後建設業許可の再申請を行えば、通常どおり2カ月程度で再取得が可能となる。上述の企業と同様の事態に陥ったとき、何の抵抗感もなく自主廃業を選択する企業は今後さらに増えていくのではないだろうか。建設業法の存在感は希薄になるばかりだ。記憶を順繰りにたどっていくなかで、福岡市のストック活用事業と建設業許可の自主廃業、この2つがとくに印象に残っていた2022年。23年も、まちづくりを支える建設業者の動向に注目していきたい。
【代 源太朗】
法人名
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