東京電力、再エネの余剰電力を仮想通貨のマイニングに利用へ
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余った再エネ由来電力を利用
東京電力パワーグリッド(株)は、再生可能エネルギーによって発電された全国の余剰電力を有効活用するため、これらの電力が余っているときに仮想通貨(暗号資産)のマイニング(採掘)を実施する仕組みを手がけている。主に、太陽光発電の多い昼間などに再エネが余りやすい地方での利用を想定している。
仮想通貨のマイニングとは、「ビットコイン(BTC)」や「イーサリアム(ETH)」などの仮想通貨の取引データを検証して承認し、「ブロックチェーン」と呼ばれる分散型データベースに追記するための暗号計算をすることだ。仮想通貨のマイニングにより電力の需要を新たにつくり出し、再エネの余った電力をデジタル価値に変えることができるという。
仮想通貨の特徴は、国の中央銀行などの通貨発行の主体がなく、コンピューターのブロックチェーンにより価値が保存され、偽装されないよう管理されていることだ。国家や銀行などの中央集権的な組織により管理されている円やドルなどの法定通貨とは対照的で、今後さまざまな分野での活用が広がることが見込まれる。
実際の仮想通貨のマイニングは、東京電力パワーグリッドが8月に設立した100%子会社会社で、再エネによる電力で「分散コンピューティング」システムを稼働させる(株)アジャイルエナジーX(エックス)が行う。分散コンピューティングとは、複数のコンピューターを使うことで膨大な量のデジタルデータを同時に高速処理する技術で、世界的に活用が拡大している。東京電力パワーグリッドは、仮想通貨のマイニングによる報酬として仮想通貨が新たに発行されることから、新たな事業の1つとして注目している。
再エネの出力制御は減少か?
太陽光発電や風力発電などの再エネは、天候や時間によって発電量が変動する。とくに晴れの日の昼には、太陽光発電による電力供給が増えがちだ。そのため、電力の需要と供給のバランスを取るためには、蓄電池や熱貯蔵の導入などエネルギーを蓄える仕組みが必要とされる。
エネルギーを蓄える蓄電技術は日々開発が進められているが、コスト面などの理由でまだ十分に普及していないため、電力供給が過剰となった場合には、再エネの出力制御が行われている。とくに太陽光発電が多い九州電力管内では、需要を上回る電力の発電がある時間帯に、出力制御がたびたび行われている。
再エネにより発電され、需要を超えて余ったエネルギーは、活用されることなく「捨てられている」のが現状だ。東京電力パワーグリッドは、仮想通貨のマイニングを行うことで、これらの再エネの余剰電力を十分に活用したいと考えている。全国各地に設置した「分散型データセンター」を連結させて同時に動かし、1つの大きなコンピューターとして機能させることで、再エネにより地域で発電された電力をその地域での仮想通貨のマイニングに利用し、余剰電力の「地産地消」を目指すという。
世界では、仮想通貨、とくにビットコインのマイニングに膨大な電力が消費されている。仮想通貨のマイニングはいつでもどこでも行うことができるため、余剰電力として余ってしまったエネルギーの活用手段として、柔軟に運用できると考えられている。アジャイルエナジーXは、自治体や再エネ事業者が導入する再エネにより発電された電力の余剰分を買い取って利用する計画だ。生み出されたデジタル価値による利益の一部は、自治体や事業者に電気料金として還元するという。
【石井 ゆかり】
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