2024年11月23日( 土 )

宇和島運輸新造船「れいめい丸」が就航(後)

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運輸評論家 堀内 重人

 宇和島運輸(株)(愛媛県八幡浜市)は、八幡浜市の八幡浜港と大分県別府市の別府港、臼杵市の臼杵港を結ぶフェリー航路を運営している海運会社である。会社名にある宇和島からの航路は、2000年11月に宇和島~別府間の航路が旅客数の減少を理由に休止になるまで運航されていた。

 宇和島運輸は現在、八幡浜~別府間の航路と、八幡浜~臼杵間の航路を運航していることから、四国~九州間の人流や物流を支えている。

 宇和島運輸のトピックとして、2022年6月23日に新造船として「れいめい丸」が就航したことが挙げられる。そこで本稿では、「れいめい丸」が導入された背景とその様子などを紹介したい。  

「れいめい丸」の就航

(写真1) 「れいめい丸」
(写真1) 「れいめい丸」

 「れいめい丸」(写真1)は、従来の「えひめ丸」に代わる新造船である。全長121m余り、総トン数は2,718tであり、「えひめ丸」よりも全長が10m程度延伸されている。その結果、乗客の定員は586人にまで増え、乗用車に換算すれば160台まで積載が可能となった。そして将来的には電気自動車が普及することを見越して、車両甲板には充電設備を設けている。

 ただし実際に積載される自動車は乗用車が主流ではなく、シャーシーや海上コンテナのドレージ輸送が主となっている(写真2)。現在の物流業界はトラック運転手の確保が困難であるため、物流の担い手としてフェリーへの期待が集まっている。

(写真2) トラック積み込み
(写真2) トラック積み込み

 フェリーを使用すれば、船内でシャーシーや海上コンテナを切り離し、無人航送を行うことが可能である。着岸時には、トラクターヘッドを連結して、ドレージ輸送を行えば良い。また有人航送を行う場合は、運転手さんを船内で休憩させることが可能となり、労働環境の改善につながるだけでなく、道路交通渋滞の緩和や大気汚染物質の排出量の削減、道路交通事故の減少など、社会的な便益にもつながる。

 そのような社会的背景もあり、昨今導入されるフェリーは大型化の傾向が進み、とくにシャーシーや海上コンテナの積載台数が増加している。またリタイヤ層の増加にともない、フェリーでゆったりと旅をしたいというシニア層の旅客需要も増加傾向にある。

 速力は、「えひめ丸」と同等の20.2ノットであるが、環境にも配慮されたCO2やNOx、SOxの排出量が少ないエンジンが採用」されている。

「れいめい丸」の船内設備

(写真3) 座敷席
(写真3) 座敷席

 船内であるが、二等客室は「和」をイメージしており、座敷席は畳敷きのスペースも設けられている(写真3)。二等客室には椅子席もあるが、こちらはJRの特急電車のような感じのリクライニングシートが採用され、背面にテーブルが備わっている(写真4)。二等客室も、座敷席・座席ともに無料のWi-Fiサービスが利用可能であり、客室のコンセントの数も増えたため、スマホなどへの充電する際に便利になった。

(写真4) 座席
(写真4) 座席

 特等室や一等室は、アッパーデッキの3階に設けられている。アッパーデッキへ移動する際も、高齢者の利用にも配慮して、エレベーターが備わっている。

 特等室は、進行方向に向かって右側に1室だけ設けられており、トイレ・洗面所も備えた個室であるが、フローリングの床にキングサイズのベッドとソファーを備えている。この部屋は4名まで利用が可能だが、貸切制であるから相部屋になることはない。1名でも利用が可能だが、その場合は特等の運賃にプラス貸切料として、5,000円(通年一定)を支払う必要がある。

 一等室も個室であり、進行方向左側に3室、特等室の後ろに1室の合計で4室設けられている。特等室ほど豪華ではないが、枕、毛布とマットを備えており、4~8名の個室である。特等室のように貸切制にはならないから、1名で利用する場合も貸切料を支払う必要はない。またなるべく相部屋にならないように配慮がなされている。個室には窓があり、海を望めることもできる。また特等室・一等室の乗客専用の上級ラウンジも3階に設けられており、進行方向に向かって窓があるだけでなく、より豪華で重厚なソファーが備えつけられている。その他に、3階にはペットと同伴することができる“ウイズペットルーム”という個室も用意されている。また深夜便を利用した場合、八幡浜や別府着が早朝となってしまうため、両港ともに午前5時30分まで船内で滞在することが可能である。

 宇和島運輸は、八幡浜~別府間に1日に6往復の運航を実施しているが、「れいめい丸」はこのうち3往復を担っている。

今後の課題

 2022年6月23日から就航した新造船「れいめい丸」は、船内はバリアフリー化が実施されており、船内にエレベーターが備わることから、高齢者も安心して利用できるようになった。また八幡浜港も2022年4月30日から新ターミナルが稼働したことから、乗船・下船にはボーディングブリッジを使用する(写真5)。乗船・下船が円滑に行えるだけでなく、フェリーとターミナルビル間が緩やかなスロープとなり、ベビーカーを利用する旅客も乗船・下船が楽になった。

(写真5)ボーディングブリッジ

 だが別府港は、いまだにタラップの昇降をともない、また乗船・下船は車両甲板から行うため、高齢者などの乗降には障害が多い。また車両甲板は自動車やトラックが行きかうため、安全上の問題もある。

 別府港のフェリーターミナルは別府市が所有しているため、バリアフリー化には別府市と協力が不可欠である。

 決済に関しても、他のフェリー会社ではクレジットカードによる決済が可能であるが、徒歩で乗船する乗客は、現金でしか決済できない。一方で自動車を積載する利用者はクレジットカードによる決済が可能であるため、不公平感が生じてしまう。宇和島運輸では、インターネットで予約が可能だが、その際に徒歩で乗船する人もクレジットカードによる決済が可能となるように改善が必要であろう。

(了)

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