活況を呈する韓国のバッテリー材料業界(後)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏「ハイニッケル電池」が市場をリード
正極材はリチウムと金属成分の組み合わせでできている。主に使われている金属成分としては、エネルギー密度の決め手となるニッケル、安定性を高めるコバルトとマンガン、出力を向上させるアルミニウムなどがある。この組み合わせの比率をどのようにするかによって、用途に応じた電池が誕生するわけだ。
色々な種類の電池が出荷されている中、車載電池の正極材として最も多く使われているのは、走行距離と出力に優れている三元系NCMである。三元系電池材料の一つであるコバルトは、リチウム、ニッケル、黒鉛とともに車載電池のコア材料である。コバルトは使われる量こそ少ないものの、価格は一番高く、リチウム電池における金属原価の4割を占めている。
コバルトの埋蔵量も生産量もコンゴ民主共和国が最も多い。しかし、コンゴは紛争が絶えないため、供給には不安が付きまとう。なお、コンゴで採掘されたコバルトのほとんどは中国で精錬されている。
課題は中国への依存度増加
昨年米国で成立したIRA法(インフレ抑制法)によると、中国で生産された一定比率以上の鉱物が車載電池に入っていると、米国の補助金を受けられなくなるという。これは正極材メーカーにとって喫緊の課題である。そこで、価格の高いコバルトの使用をできるだけ抑え、そのかわりにニッケルの量を60%以上にした「ハイニッケル電池」が開発され、市場をリードしている。
ニッケルの割合を高めれば高めるほど、容量が増えて走行距離が長くなる。一方、ニッケルの量が増えると、電池の安定性が落ちることになるので、ニッケルの量が増えても、安定する方法についての研究が重ねられている。
韓国を代表する正極材企業に、ポスコケミカルとエコプロビーエムがある。現在、ポスコケミカルの生産キャパは年10.5万トンであるが、2030年には世界一となる60.5万トンをめざしている。
ポスコケミカルの正極材売上高は2倍以上となり、正極材の売上高が全体の58.7%を占めるほど成長した。ポスコケミカルはグループで投資をしたオーストラリアのニッケル鉱山、アルゼンチンのリチウム塩湖、排バッテリーから原料を抽出するリサイクル事業など、安定的な原料供給のためのサプライチェーンを作り、車載電池メーカーに原料を供給できるシステムを構築しつつある。
正極材分野で韓国最大手のエコプロビーエムの去年の売上高は5.3兆ウォンで、同社は前年比で260%成長している。同社の生産キャパは21年の年間7万7,000トンから昨年は12万5,000トンに増えた。株価も去年の初め頃は5万ウォンほどだったが、最近ではそれから4倍近くも上昇している。なぜならば、正極材市場が成長するにつれ、5年間で売上高が13倍となったからだ。ちなみに正極材の世界最大手は日本の住友金属鉱山である。
韓国の株式市場で株価を牽引している車載電池関連会社であるが、中国への依存度が高いことを懸念する専門家もいる。水酸化リチウムの対中国の輸入依存度は、18年の64.9%から22年は83.8%に増加した。コバルトは53.1%から64.0%に増加している。また、負極材の黒鉛は90%近くになっている。
車載電池の需要増加で電池メーカーも材料メーカーも売上高が急激に伸びているが、それに比例して中国への依存度も増加していることが業界の課題となっている。
(了)
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