厳しさ増す市場環境下、積水ハウスが打ち出した「奥の手」
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少子高齢化社会の到来とともに、住宅産業のプレイヤーたちはビジネスモデルを変えてきた。たとえば、大手ハウスメーカー。かつては庶民向けの住宅を供給していたが、次第にターゲットを富裕層とするようになり、今や1棟当たりの平均受注額は3,000万円台半ばから後半にまで達するようになってきた。その結果、1億円を超える住宅を受注することなども珍しくはなくなっている。
そうなってきたのは富裕層向けが高付加価値、要は高い収益を見込めるからだが、メリットばかりではない。受注金額とともに棟数も増えていれば良いが、後者は住宅市場縮小局面のなかで徐々に減る傾向にある。
受注棟数が減ると、プレハブ系ハウスメーカーのように大規模な工場を有する事業者は生産性を下げ、収益を圧迫するようになる。だから、本来は高・中・低の価格帯の住宅をまんべんなく受注し、量も利益も得られやすい体制であることが経営面ではより健全であるはずだ。
そんなことを考えさせる、興味深い新たな住宅供給の取り組みを積水ハウス(株)が始めようとしているので今回紹介したい。このほど発表された、2023~25年度までの「第6次中期経営計画」に盛り込まれている「SI事業」がそれにあたる。
SIとは「スケルトン・インフィル」のこと。一般的には前者は基礎・構造躯体・外装、後者は内装・間取り・設備などを指すが、この事業では前者は基礎と構造躯体、後者は内外装と間取り、設備などを指す。
下請になるグループ会社
スケルトンは、木造住宅「シャーウッド」向けのもの。積水ハウスがそれを地域ビルダーに提供し、子会社の積水ハウス建設グループが下請として、建物の基礎・躯体工事を請け負うビジネスモデルだ。
地域ビルダーは、内外装などでオリジナリティを発揮し、差別化することができる。積水ハウスグループの保証を付けるのも特徴の1つで、売上規模については1棟単価約2,500 万円の場合、スケルトン工事の請負額は1 棟単価の数分の 1 程度の規模と見積もっている。
25年以降、住宅を含むすべての建築物に省エネ基準「断熱等級4」の適合が義務付けられるうえ、住宅市場が縮小傾向にあるなかで地域ビルダーの世界でもより強力な差別化策が求められるといった状況が、この事業開始の背景にある。
大手ハウスメーカー、なかでもプレハブ系の住宅商品は特許技術によるもので、これまでは「門外不出」というべきものだった。SI事業はそうした既存の枠組み、考え方から脱却する、これまでにない「奥の手」として注目される。
積水ハウスとしてはこれにより、これまで手薄だった低価格帯のテコ入れをしたいという思惑がある。とは言っても、これはあくまで3,000万円以下、2,500万円を中心とする、一般的にはボリュームゾーンといわれる価格帯であるが・・・。
パワービルダーによるローコスト住宅などと比べれば、十分立派な建物になるだろう。複数のパートナー企業と組み、25年度に300棟を目標としているというが、思惑通りに進むのか、事業の推移が注目される。
いずれにせよ、こうしたビジネスモデルが考案、実施されるということは、とくに新築住宅市場がこれまでにない、新たな厳しい局面に入りつつあることを広く周知させるものといえそうだ。
【田中 直輝】
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