七隈線、博多駅への延伸による効果と今後の課題(後)
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運輸評論家 堀内 重人
福岡市地下鉄七隈線の天神南~博多間が3月27日に開業した。これまでJRと七隈線の乗り換え利用者は、博多・天神間で空港線を利用し、さらに空港線と七隈線の間の天神・天神南駅間を徒歩で移動する必要があったが、七隈線が直接博多に乗り入れたことにより利便性が大幅に向上した。開業による天神地区・川端地区などの動きも含め、紹介したい。
博多駅延伸開業の影響
七隈線が博多駅へ延伸開業したことで、天神南で下車しての乗り換えが解消されるとともに、博多駅までの所要時間が14分短縮され、新幹線や在来線も含めたJRとの乗り換えが便利になった。また博多駅から薬院への移動も、七隈線を利用すれば5分で移動が可能になるなど、都心部の渋滞緩和にも貢献することが予想される。
一方、福岡空港へ向かう場合も、七隈線の博多駅のホームと空港線の博多駅のホームは150m程度離れているが、従来の天神南駅から空港線天神駅との間よりも距離が短縮されただけでなく、改札を出なくても空港線・七隈線間の乗り換えが可能となり、利便性が向上した。
七隈線の延伸開業は、博多駅や福岡空港へ向かう人だけでなく、沿線にある福岡大学や中村学園大学へ通う学生にとっても利便性が向上した。開業日が、3月27日とされたのは、福岡大学の入学式が4月1日に実施されることから、それに間に合わせる必要もあったことが影響している。
だが七隈線が博多駅へ延伸開業したことで、逆に不便になった人が生じている点も見逃せない。福岡市早良区の星の原団地では、路線バスの減便というかたちで、不便になってしまった。この団地は、約2,000世帯が暮らす規模が大きい団地であり、七隈線の最寄り駅は賀茂駅になる。少し高台に位置しているが、高齢者が多く住んでおり、西鉄の路線バスで天神や博多へ出掛けていた。
七隈線の延伸にともない、星の原団地を起点に天神や博多駅など都心部を結ぶ3番系統のバスは、七隈線沿線を走るため1日当たり31本の減便が実施された。
地下鉄は、速くて便利ではあるが、星の原団地の住民は、坂を下って地下鉄の賀茂駅へ行かなければならない。そして賀茂駅に到着しても、地下へ降りなければならないため、エレベーターやエスカレーターが整備されたとしても、高齢者にすれば抵抗があることは事実である。また地震や火災などが発生したときの不安も、無視できない要因である。それゆえ何処の都市でも、高齢者は地下鉄を避けようとする。今後は、賀茂駅から星の原団地を結ぶコミュニティバスか乗合タクシーを設定して、団地に暮らす高齢者に対する配慮が必要ではないだろうか。そうしなければ高齢者が自宅へ引き籠ることになってしまう。
一方、地下鉄七隈線の博多駅まで延伸開業によって、博多駅と天神南駅の間に「櫛田神社前駅」という新駅が開業した川端地区は、活性化が期待されている。櫛田神社前駅の傍には、キャナルシティ博多や川端通商店街などがあるが、昨今では郊外の幹線道路沿いに大型商業施設が乱立して、中心市街地の空洞化も指摘されている。今回、七隈線が博多駅まで延伸開業したことが、中心部の活性化の起爆剤となることも期待されている。それゆえ川端地区の商業施設は合同で、七隈線開業のイベントを実施して博多駅周辺ではなく、川端地区を盛り上げようとしている。
筆者は、七隈線が博多駅まで開業したことで、天神地区が若干衰退することもあるのではないかと懸念していたが、新たに天神南駅周辺への出店もあるという。福岡市交通局へヒアリング調査したところ、天神南駅で下車して、空港線の天神駅まで歩く人は激減したが、新たに博多駅から乗車して、七隈線で天神南駅へ向かう需要も発生しているという。そのためJRで博多駅にきた人を、天神南駅周辺へ誘致する動きも見られるなど、都心部の回遊性が向上したといえる。
地下鉄七隈線の博多駅への延伸開業は、星の原団地に暮らす高齢者に対しては、路線バスの減便というかたちで不便になってしまったが、博多駅への直通による利便性の向上、福岡市内の中心市街地の活性化や道路交通渋滞の緩和など、多くの便益をもたらしている。
福岡市は、都市の規模の割には地下鉄などの鉄道が脆弱であるため、福岡空港国際線ターミナルへの乗り入れなど、今後も鉄道の整備や改良が必要であるが、高台に暮らす高齢者等に対しても配慮を行うことは不可欠であろう。
(了)
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