2024年12月23日( 月 )

百貨店解体新書(2)都心の百貨店は「商業施設」に衣替え(後)

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「米国に行はるる(米国で採用されている、という意味)デパートメント・ストアの一部を実現可致(いたすべく)候事」
 1905(明治38)年1月、三越呉服店は主要新聞に全面広告を掲載し、日本初のデパートメント・ストアを宣言した。我が国の百貨店の歴史はここから始まる。三越は近代百貨店の始祖だ。
 それから1世紀超。百貨店は落日を迎えた。百貨店の閉店が止まらない。

百貨店の売上はコンビニの半分もない

 百貨店業界はコロナ禍から脱け出しつつある。日本百貨店協会がまとめた2022年1年間の全国百貨店売上高は4兆9,812億円となり、既存店ベースで前年比13%増と2年連続で増加した。行動制限と水際対策の緩和で客足が戻り、コロナ禍前の19年の9割近くまで回復した。

 とくにインバウンド(訪日外国人)の消費が拡大。22年の免税売上高は、前年比約2.5培の約1,142億円となった。円安を追い風に、時計やバックなどの高額品が人気を集めたという。

 だが、専門店の台頭やインターネット通販の拡大で、百貨店はコロナ禍前から長期低迷が続いており、ピークだった1991年には9兆7,130億円あった売上高はほぼ半減した。その間、地方百貨店を中心に店舗数は減少を続け、268店から189店へと3分の1に減った。

 コンビニエンスストアの22年1年間の売上高は、前年比3.7%増の11兆1,775億円(日本フランチャイズチェーン協会調べ)。百貨店の売上はコンビニの半分にも満たない。

 家電大型専門店の22年1年間の販売額は、前年比0.5%増の4兆7,084億円(経済省産業省「商業動態統計」)。閉店が相次ぐ百貨店の売上高が家電量販店にも抜かれるのは時間の問題だ。

百貨店は郊外型大型店、ネット通販に敗れる

 百貨店の減少が続いている理由は複合的である。

 1つは郊外型大型店との競争に敗れたことだ。かつて地方都市では、バスターミナルのある市街地が商業の中心だった。しかし、マイカー時代の到来で、広大な駐車場を持つ郊外のショッピングセンターに客足を奪われた。旧市街地の商店街はシャッター街となり、その中核を担った百貨店は衰退した。

 さらに追い打ちをかけたのが、インターネット通販の浸透である。ネット通販は、スマートフォンの普及を背景に右肩上がりに増加。若い世代はネットで購入し、百貨店に足を向けなくなった。地方百貨店には構造的要因がのしかかる。人口減少にともなう地方経済の衰退だ。

 百貨店の減り方が激しいのは北海道、東北、四国。過疎化が進む県では、百貨店の閉店が進むことになる。

仰天!近鉄百貨店の「外商」の売上高は、なんと全社の44%

あべのハルカス近鉄本店 イメージ    それでは都市型百貨店はどうなるか。三越伊勢丹、阪急阪神百貨店、大丸松坂屋百貨店などの大手百貨店は、外商に力を入れている。ヤフーニュースに掲載されていた、「富裕層を中心とした外商の売り上げ好調、近鉄百貨店が決算発表、コロナから3年ぶりに黒字転換」というタイトルの、4月11日付記事が目に留まった。

 近鉄百貨店の2023年2月期の決算は、売上高が前期比9.9%増の1,078億円、最終損益は18億円の黒字となり、2020年2月期以来、3期ぶりの黒字転換となった。

 記事によると、「富裕層を中心とした外商の売り上げ」と「インバウンドによる免税品の売り上げ」の好調が、業績回復の要因という。

 外商の売上は前期比12%増の約480億円で、なかでも著しい伸びを示したのが高額の美術工芸品の売上である。一方、免税品は前期比60%増の約130億円で、こちらも高額品の売上が伸びた。

 そして、大手百貨店は都心部という好立地を活用し、轡を並べて複合商業施設に進出する。イオングループが運営するモール型ショッピングセンター「イオンモール」、三井不動産の「ららぽーと」、三菱地所の「マークイズ」などの都心型商業施設がライバルになる。

(了)

【森村 和男】

(前)

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