2024年11月22日( 金 )

楽天モバイル、九州の孫請け企業救済に差別待遇?(後)

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楽天モバイルは本件でこそ社会的責任をはたすべき
(つづき)

 楽天モバイルの不正請求事件では、19~21年で不正請求額は総額約300億円。うち、水増し額として楽天モバイル側が被った損害は100億円に上るとみられる。

 逮捕された1人は楽天モバイルの元物流管理部長である。当人の楽天グループへの入社は18年7月、楽天モバイルへの転籍は19年で、間もなく不正を始めたとみられている。楽天社内の人事や社内のチェックを含めたガバナンスの甘さが、膨大な不正請求の温床になったのではないかと考えざるを得ない。その結果として孫請けが損害を負わなくてはならない事態に、楽天は責任を感じないのだろうか?

 今回の件について、当社は楽天モバイル側の見解をただすべく取材を申し込んだが、断られた。

楽天グループ イメージ    本件について、孫請け2社と楽天モバイルとはたしかに直接的な請負関係にはない。そして、不正請求事件において楽天モバイルは被害者であるというのもたしかである。だが、他ならぬ楽天モバイルの部長が引き起こした事件なのだ。それがこれほどの巨額の不正請求となり、ひいてはトレイルの口座凍結と孫請けへの工事代金不払いを引き起こしたことについて、楽天モバイルに責任はないと、本当に言えるだろうか。

 年間の売上収益が1兆9,000億円を超える大企業と中小企業とでは、あまりにも企業規模が違いすぎる。その大企業で不正が生じた場合、取引先などへ大きな影響を与える可能性がある。楽天モバイルのガバナンスがしっかりしており、せめて少ない不正請求額で抑えられていれば、トレイルの口座凍結も孫請けへの代金不払いも生じなかったはずだ。今回、孫請け業者が被った損害は、1社は1億4,000万円、もう1社も総額4,700万円弱に上る。中小企業にとっては死活問題である。

 楽天モバイルについては、ガバナンスとコンプライアンスに問題があるのではと疑わせる事件がほかにも起こっている。楽天モバイルは21年1月にも、5Gに関する秘密情報を持ち出したとして元社員が逮捕される事件があった。逮捕された元社員は、20年1月付で楽天モバイルに転籍する前の04年7月~19年12月末までソフトバンクに勤務していたが、転職直前の11~12月末にかけて同社から情報ファイルを持ち出したというのがその骨子である。

 20年2月に不正持ち出しを察知したソフトバンクが警視庁へ相談、同年8月に楽天モバイル本社や元社員の男の職場が家宅捜索され、持ち出された秘密情報ファイルが発見されている。男は22年12月、不正競争防止法違反(営業秘密領得)の罪で懲役2年、執行猶予4年、罰金100万円(求刑懲役2年、罰金100万円)の有罪判決を受けた。

 大企業の多くはこんにち、CSRを標榜している。企業の社会的責任ということだ。法律によって強制されるからではなく、社会の在り方に対して積極的に責任をはたす、と。楽天も、ホームページのトップバナーに「サステナビリティ」という項目を設け、その社会的責任を全うすると高らかに謳う。それは立派なことである。だが、そう標榜するからには、まずは自社のガバナンスの結果によって生じた他社の(社会的な)損害に対し、責任を負うべきではなかろうか。

 楽天グループは立派な理念を表明しており、そのような責任を積極的にはたせる企業だと我々は信じている。だからこそ、我々もその責任をここで訴えている。

(了)

【寺村朋輝】

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(中)

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