欧州最大級の原発が稼働、どうなる電力カルテル問題
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約15年ぶりに欧州で新原発が稼働
欧州で最大級の原発となるフィンランドのオルキルオト原発が4月16日、新たに稼働した。欧州で新たな原発が稼働するのは、約15年ぶりだ。2011年に福島第一原発事故が発生してから原発の安全性に対する懸念が世界的に高まり、各種の規制が強化された結果、原発を新たに開発する計画が停滞していたためと考えられる。EUの原子力発電所からの発電量は2006年から21年の間に20%減少した。
EUでは、総発電量の25%を原発による発電が占めている。2021年にEUで最も多くの電力を原発により発電した国はフランス(51.8%)であり、ドイツ(9.4%)、スペイン(7.7%)、スウェーデン(7.2%)、ベルギー(6.9%)が続く。しかし、ドイツは4月15日に国内に残っていた原発3基を停止させて、「脱原発」を完了させた。また、スペインも27年から原発を順次閉鎖し、35年までにすべての原発を停止させる計画だ。一方、ベルギーは25年までに原発を閉鎖する計画を発表していたが、22年3月に原発の運転を10年間延長することを決定しており、今後の政策により国の方向性が決まると考えられる。
欧州で最も多くの電力を原発で発電しているフランスは、今後も新たな原発を建設する方針だ。また、スウェーデンは複数の原発を段階的に閉鎖しており、これまで原発の新設を行わない方針であった。しかし、すでに原発がある立地以外での新たな建設を禁止する規定や運転する原子炉の数を10基に制限する規定を削除する、原子力に関する改正法案を今年1月11日に政府が提案した。原発の新設計画に向けて動き出す姿勢を見せており、その動向が注目される。
このように欧州では、各国の原発に対する方針は大きく異なる。脱原発に舵を切った国と、原発の新設を進める国の立場の違いは、これからもさらに大きくなることが予想される。
電力カルテル問題の行方
日本では、公正取引委員会が3月30日、中部電力(株)および同子会社である中部電力ミライズ(株)、中国電力(株)、九州電力(株)および同子会社である九電みらいエナジー(株)に対して、独占禁止法の規定により、排除措置命令および課徴金納付命令を行った。関西電力は自ら違反申告を行ったため、課徴金を免除となっている。
この状況に対して、中部電力は取り消し訴訟をすることを発表しており、加えて中国電力、九州電力も取り消し訴訟を検討しているとされている。これらの企業は電力小売自由化前の旧一般電気事業者であるが、今回の問題に関して関西電力を含む4社が団結する姿勢は見られず、各社が個別に対応している状況だ。中部電力、中国電力、九州電力の3社に納付命令が出された課徴金は合計1,010億円とされており、今後の3社は財務面で大きな影響を受ける可能性が高い。
福島第一原発事故以降、原発に対する安全性への懸念は高まっている。また、上記の状況から、原発などのエネルギーばかりに頼らず、未来に向けて地域で新たなエネルギーを開発していく必要がある。次回から、新しいエネルギーのあり方について紹介していきたい。
【石井 ゆかり】
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