2024年11月05日( 火 )

博多港をグローバル物流の中核拠点に アジアと日本経済を牽引する港湾を目指して

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船舶の安全と港湾管理を担って

 中国や韓国など東アジアの沿岸都市との往来が容易な位置にある「博多港」は約2000年の歴史を有し、九州の玄関口としてアジア諸国との交易で栄えてきた。博多港ふ頭(株)はこの博多港の8つの公共ふ頭(博多ふ頭、箱崎ふ頭、中央ふ頭、香椎パークポート、東浜ふ頭、荒津地区、須崎ふ頭、アイランドシティ)の施設・設備の管理運営を担っている「公共港湾施設指定管理者」であるとともに、香椎およびアイランドシティの両コンテナターミナルの「港湾運営会社」である。1993年4月に「管理型から経営型の港湾運営」をコンセプトに、福岡市が51%を出資する第3セクターとして設立され、今年で30周年を迎えた。

 博多港をめぐり、福岡市関係者の間ではかねてよりその地理的優位性をもっと生かすべきとの声が挙がっていた。博多港の地理的優位性が発揮された実例の1つが、上海・博多間で運行されていた高速船「上海スーパーエクスプレス」である(日本通運(株)の子会社で2015年12月に解散した上海スーパーエクスプレス(株)が運航)。上海港を土曜日の夜に出港し、月曜日の午前中に博多港へ入港。東京・大阪などの主要都市への入港翌日の配達を可能としており、日本向け輸出製品の高速輸送ニーズに対応してきた。市関係者は、東京でも大阪でもできない博多ならではサービスだったと胸を張る。

 博多港では、実際に九州内の外国貿易で使用されるコンテナ取扱量の約半分を取り扱っている。24時間コンテナを扱うアイランドシティ、香椎パークポートのコンテナターミナルをはじめ、自動車などさまざまな荷物を扱う箱崎ふ頭、建設資材などを扱う東浜ふ頭、さらに中央ふ頭には全国有数の国際旅客ターミナル「博多港国際ターミナル」と「中央ふ頭クルーズセンター」があり、国内屈指の交易の拠点となっている。

アイランドシティコンテナターミナル全景
アイランドシティコンテナターミナル全景

 3年におよんだコロナウイルス感染症の行動規制は現在大きく緩和されたが、貿易や国境を跨いだ物流に対して規制がなされた結果、大きな打撃を受けた。

 博多港には福岡市のみならず福岡都市圏、さらには九州全体の人々の生活を支える物資を積載してやってくる。国際コンテナ定期航路は39航路あり、月間にして204便にもおよぶ。日本海側に面した港としては唯一、北米航路が就航しており、中国、韓国、台湾、東南アジア諸国など、アジアを中心とした広範なネットワークが張りめぐらされているのが特徴だ。

 出入りする船舶の国籍も当然ながら多く、その船舶の港内での安全航行を確保するため、ガントリークレーン(橋脚型の大型クレーン)をはじめとする設備や岸壁の保守管理、入出港時間・係留位置の調整や曳船(タグボート)・立会による着離岸補助、飲料水・生活用水の給水といった業務に、24時間体制で従事している。

 近年は大水深岸壁を擁するコンテナターミナルの整備や次世代の物流拠点としてのアイランドシティの整備に事業を推進してきた。国境を越えたグローバル経済の進展にともなって港湾間の競争も激しさを増すなか、時代のニーズにもきめ細やかに応える良質な港湾サービスにより、取扱量を着実に伸ばしてきた。

 外航コンテナ船は主に香椎パークポートとアイランドシティに寄港している。両コンテナターミナルで、博多港全体の国際コンテナ貨物の約9割を取り扱っている。

 コンテナ港での業務は輸出貨物がメインとなる。同社は事業の拡大のため、周辺地域に社員を派遣し、情報収集などを行っているが、国際競争力のあるサービスをいかに創出できるかが大きな課題である。

国内外物流の担い手と日本海側物流の拠点を目指す

 博多港は国際物流のみならず、国内海上輸送の拠点港としても大いに期待されている。目下の課題は、来年からトラック運転手の残業上限規制の導入にともない人手不足が懸念される「物流の2024年問題」への対応である。

 働き方改革により、トラックの運転手不足と、それにともなう物流の停滞が懸念されるが、対応できるのは海運と鉄道しかない。長距離トラック業者の間では、鹿児島から東京まで走らせるというような昭和的な考え方が根強いが、これでは物流業に従事する人々は家庭を築きにくい。現在、とくに若年層はそのような働き方を敬遠する傾向にある。間違いなく海運がトラックの運転手不足をカバーすることになる。

 もう1つ重要な点がある。災害に強い福岡市にある博多港は日本全体にとって重要な役割をもつということだ。その関連からも、博多港は日本海側の物流の拠点として、これまで以上に機能を進化させていく必要がある。関係者は、南海トラフ地震が起きた場合に、物流の拠点、前線基地となるのは新潟ではないかと話す。そして博多港が後方基地となるという。同社の幹部は日本海側の富山、福井・敦賀、京都・舞鶴、鳥取などの各港を回っているが、これらの港と連携を深めていくことで新たな需要が見込まれる。

 同社は船社や荷主の博多港利用促進を図るべく、福岡市港湾空港局と連携してさまざまな支援事業を行っている。たとえば、博多港物流トライアル推進事業では、荷主や物流事業者に対し、博多港を利用した新たな物流ルート構築に向けたトライアル輸送に係る経費について、最大100万円の支援を行う。

 博多港はアジアに近接した地理的優位性を武器として、九州の国際物流拠点として成長を続けてきた。博多港のコンテナ取扱量は国内では東京・横浜・名古屋・大阪・神戸に次いで6番目になる。これに満足することなく、5番目の背中を追いかける気概をもってよいだろう。博多港は大陸に近いという大きなメリットがあり、また、国内のコンテナ取扱量上位のなかで、唯一日本海側にある港という特徴がある。現在、日本の製造業は、重くて大きなものをつくらなくなり、小さくても価値の高いものが求められている。大きな船が来られなくても、小さな船が何回も往復するのでもよいのだ。

 グローバルに視野を広げ、福岡・九州の国際・国内物流拠点の担い手として自らの能力を生かしてみたいと考えるならば、同社はうってつけの場であることは間違いない。


<COMPANY INFORMATION> 
所在地:福岡市東区香椎浜ふ頭4-2-2
設 立:1993年4月
資本金:7億円
TEL:092-663-3111
URL:https://hakatako-futo.co.jp

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