2024年11月08日( 金 )

新しいお墓の形~家族、生き方、お墓が変わる(2)新しい需要、樹木葬

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 働き方や生き方、家族まで、あらゆるものが変わりつつある現在。この変化は浮世の生にとどまらず、死後の世界にも押し寄せている。すなわち、お墓である。本記事では、現代の標準的な家墓のルーツも確認しながら、お墓の新しい在り方を紹介する。

家墓以外の選択──樹木葬の例

 (株)鎌倉新書(東京都中央区)が運営する日本最大級のお墓の情報サイト「いいお墓」が、2023年1月に実施した「第14回 お墓の消費者全国実態調査(2023 年)」の調査結果を発表した。「いいお墓」経由でお墓を購入した人にアンケートしたもので、購入したお墓の種類としては「樹木葬」が51.8%でトップ。次いで「納骨堂」20.2%、「一般墓」19.1%となり、初めて樹木葬が過半数を超えたことが分かった。

樹木葬の例(新宮霊園)
樹木葬の例(新宮霊園)

    樹木葬とは、霊園等によって異なるものの、一般的には樹木を墓標の代わりとする永代供養墓のいち形式である。樹木の下に個別の区画をとって納骨され、墓標が置かれる。13回忌や33回忌などを区切りに、遺骨は合祀墓へまとめられ、墓標は整理される。合祀墓とは遺骨がまとめられるお墓のことで、まとめられた後は遺骨を分けて取り出すことはできなくなる。

 最初から合祀型の樹木葬もあるが、個別の区画を設ける場合は基本的に、個人墓あるいは夫婦墓、埋葬人数が多くても6人程度のひと家族だけが入る規模の墓である。墓所の維持管理や合同供養は霊園や寺院が行うため、墓守は必要ではない。つまり、お墓の維持を承継者に委ねず、納骨からその後の管理と墓仕舞いまでを、すべて納骨される本人が生前に決定し負担するお墓だ。それが樹木葬という形式で受け入れられるのは、自分の死を委ねる相手が子どもや子孫から樹木=自然へ移ったことを象徴的に表す納骨のかたちだからだろう。

「ご先祖様のお墓」から
「自分と承継者のためのお墓」へ

 樹木葬の人気が示しているのは、自分の死後の葬られ方は自分で決めるとともに、後代に負担を残さない墓地形式に対する要望の高まりだ。「〇〇家之墓」といった従来の家墓は、家父長制を背景に、お墓に入る権利とご先祖様を祀りお墓を守る義務とが紐づいていた。しかし、家族のかたちが変わることによって、お墓を立てるうえで配慮すべき対象が大きく変わりつつある。

 少子高齢化や非婚の増加によって、死後にお墓の承継者がいないことを前提に、納骨後のお墓の管理や墓仕舞いまで明確にプラン化された個人墓を買い求める人が増えている。また、そのようなお墓を買い求める人は、家墓をもたない人ばかりではない。すでに自分が入る権利を有する家墓をもちながら、それを墓仕舞いして、ふたりだけの小さな夫婦墓に入る、あるいは個人墓に入るという選択肢を取る人もいる。遠方に住む子どもに墓守の負担をかけたくない、自分の死後のことは自分で責任をもって自分で決めたいなど、理由はさまざまだ。

 お墓は今、ご先祖様という観念から解き放たれ、自分自身の死の象徴として意義づけを変えつつある。自分が生きているうちに墓を買い(生前墓)、あらかじめ自分の死後の始末をつけておくことが、この世の仕事の1つになりつつある。ラテン語には「メメント・モリ(死を想え)」という格言があるが、生前における死の自覚は、人生を豊かにする自己決定権の1つとして、ますます意義を高めていくことと思われる。

 次回以降は、新しいお墓のかたちを具体例で紹介していく。

(つづく)

【寺村朋輝】

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