2024年11月23日( 土 )

新しいお墓の形~家族、生き方、お墓が変わる(3)古墳型永久墓

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 働き方や生き方、家族まで、あらゆるものが変わりつつある現在。この変化は浮世の生にとどまらず、死後の世界にも押し寄せている。すなわち、お墓である。本記事では、現代の標準的な家墓のルーツも確認しながら、お墓の新しい在り方を紹介する。

新しいお墓の提案~新宮霊園の例

 ここからは新宮霊園を例に、新しいお墓の具体例を見ていこう。

 福岡県糟屋郡新宮町にある、「格調とやすらぎの公園墓地」として知られる新宮霊園。開園は1978年、今年で45年を迎えた。長渕剛のコマーシャルソングが流れるテレビCMでも有名だ。そのような歴史ある霊園が、時代の最前線で新しいお墓のかたちを提案している。

前方後円墳型永久墓

 新宮霊園は2022年4月から、前方後円墳型永久墓を売り出した。見晴らしがよい丘の上にある墳墓は、全長53m、円墳部分は直径16.3m、高さ3.5m、全体が瑞々しい緑の芝生で覆われる。この墳墓上に1人分30cm四方の区画をとり、15cmほど掘り下げた場所に骨壺が入る程度の納骨室がある。埋葬方法は、遺骨を土に返すために、綿の納骨袋に遺骨を入れて埋葬する方法と、骨壺に入れたまま埋葬する方法を選ぶことができる。埋葬された場所には番号札が置かれ、墳墓そばに建てられた銘板に埋葬された個人の名前とそれぞれの埋葬場所を示す番号が記されている。墳墓全体で3,100人分を納骨できる。

 価格は1区画(1人分)が28万円。家族や友人で複数区画をまとめて購入することもできる。その場合割引が適用され、2人目25万円、3人目22万円、4人以上は20万円となる。また、1人あたり別途7万7,000円の永久管理費が必要となる。以上の費用に埋葬手数料、名前彫刻料、供養料、墓所の維持管理費など一切が含まれ、これ以外の費用はかからない。一般的な永代供養と異なり、後年に合祀や納骨場所の撤去は行われず、永久に個人区画として保証される。墓守の負担を誰にもかけることなく、毎月1回、霊園による合同法要が執り行われ、霊園がお墓の管理の一切を約束する。

 古墳の周囲には死者の魂を鎮めるために素焼きの埴輪(はにわ)が40体ほど並ぶ。静謐であるが、暗さはまったくない。明るくすがすがしいお墓だ。見学にきて、即決する人が後を絶たないという話がよく分かる。個人で1人分を購入する人はもちろん、友人同士で購入する人もいれば、最大7人分をまとめて購入した人もあったという。昨年4月の販売開始以降、予想を上回る売れ行きで、1年余りで1,000人分が契約された。

 古墳という歴史的文化的にも考慮されたお墓の形態をとったことも興味深い。弥生時代後の3世紀から飛鳥時代前の7世紀頃まで、古墳が多くつくられた時代として古墳時代と呼ぶが、大陸・朝鮮半島とも交流があった九州北部は古墳が多くある地域で、古墳を採用するにふさわしい。開発にあたっては、八女市などにある「八女古墳群」を視察するなどして、慎重に構想を温めたという。

 埋葬は因習に従うところが大きい。新しい形式の墓を購入しようとする場合、近代の伝統となっていた家族墓の形式から外れることに、なにがしかの不安を感じる人もいるかもしれない。しかし、はるか古代に営まれた古墳という形をとることによって、歴史と親和する埋葬として死後の安らかな眠りを感じさせる効果があるのだと思われる。

(つづく)

【寺村朋輝】

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