大阪・夢洲へのアクセス鉄道の問題点(前)
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運輸評論家 堀内 重人
大阪市此花区にある人工島の夢洲(ゆめしま)。2025年の大阪万博の跡地で整備が予定されている統合型リゾート施設(IR)が9月末、本契約に至った。夢洲は当初、コンテナターミナルになる予定であったが、その後、大阪オリンピック誘致の失敗、大阪万博の開催、IR(2030年秋ごろ開業予定)と紆余曲折を辿ってきた。そこで、夢洲へ向けて整備が予定されている鉄道計画について、大阪メトロや近鉄、JR西日本、京阪電鉄の考えを解説したい。
大阪メトロの工事状況
大阪メトロ(大阪港トランスポートシステム)による工事の状況であるが、夢洲駅側から軟弱地盤にトンネルを掘削することから、単線用のシールドマシンを使い2本のトンネルが掘り進められ、2023年5月にすでに完成している夢咲トンネルに到達した。夢洲駅の建設工事も並行して続いており、このため2024年度中に開業が予定されている北港テクノポート線の工事は、順調に進んでいると言われている。
咲洲と夢洲の間には大阪オリンピック誘致に向け、夢咲トンネルが2009年に開通しているが、現時点では鉄道は開通しておらず、道路だけが供用されている。2024年度には咲洲にある大阪メトロ中央線のコスモスクエア駅から、夢洲中央部に新設される夢洲駅までの約3kmについて、北港テクノポート線の名称で地下鉄が延伸されて開業する。この路線は、夢洲と大阪市中心部の本町だけでなく、奈良県の生駒などを結んでおり、大阪万博の会場へのメイン路線となる。
北港テクノポート線のインフラについては、大阪市も出資している第三セクター鉄道の大阪港トランスポートシステムが所有する。このような形態になったのは、2000年当時は鉄道新線の建設が「免許制」であったことから、同社が事業免許を取得していたことが要因である。
大阪メトロと直通運転を行うため、大阪メトロは老朽車両の取替も兼ねて、大阪万博に向けて新型車両を導入している。この車両は、従来の車両には見られない、宇宙船を意識した斬新なデザインが特徴で、未来社会の姿を示す万博にふさわしいデザインの車両にしたという。さらに、コスモスクエアから延伸される区間は、大阪メトロが列車運行だけを担う第二種鉄道事業者となることから、上下分離経営が実現する。そのため大阪メトロは第二種鉄道事業の「許可」を国土交通省へ申請している。
近鉄の考え
中央線に乗り入れる予定の近鉄は、IRが開業する2030年の時点で、奈良方面から直通の特急列車を走らせる計画がある。近鉄奈良線は、奈良県生駒市にある生駒駅で相互乗り入れする予定の大阪メトロの中央線、近鉄けいはんな線と接続している。だが、両線の間の連絡線がないだけでなく、奈良線は架線式で直流1,500Vが採用され、中央線・近鉄けいはんな線は、第三軌条式で直流750Vが採用されるなど、集電方式だけでなく、電圧も異なることから、現時点では相互乗り入れが実施されていない。
諸外国では、架線式と第三軌条式という電化方式や集電方式が異なる区間であっても、英国とフランスを結ぶ高速列車の「ユーロスター」のように直通運転を実現しているケースもある。だが、我が国では直流電化区間と交流電化区間を直通する事例は多数あるが、集電方式が異なる区間への直通運転の事例は今までなかった。そこで近鉄は、電化方式や電圧が異なる近鉄奈良線と大阪メトロ中央線・近鉄けいはんな線の両方式に対応できる集電装置の試作品を開発し、各種試験を行っている。
近鉄は、第二名神高速道路の開業や伊勢方面の高速道路の延伸もあり、この20年で稼ぎ頭の特急電車の利用者数が6割も減少するなど、厳しい経営環境にある。そのため、夢洲エリアを訪れる海外や日本の他のエリアからのIR来場者を、近鉄沿線の奈良や伊勢方面に誘致したいと考えている。そうなると奈良~夢洲間だけでなく、賢島・鳥羽~夢洲間や、名古屋~夢洲間を結ぶ直通特急が実現する可能性もある。
(つづく)
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