ボナック、国から50億円支援のコロナ治療薬開発は「有効性なし」の判定
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核酸医薬スタートアップの(株)ボナック(本社:久留米市、林宏剛代表)が、久留米市の研究拠点からすでに退去していた件で、同社が国からの50億円支援をとりつけていたコロナ治療薬が、支援決定後の中間評価で「有効性なし」の判断を受けていたことが分かった。
福岡県との共同開発段階では有効性確認、国からの支援決定
同社と福岡県は20年5月に、核酸医薬による新型コロナ治療薬について共同開発を行うことで覚書を締結。同年6月から、バイオ・セーフティ・レベル3(BSL3)のウイルス研究が可能な福岡県環境科学研究所(太宰府市)で、新型コロナウイルス株を用いた試験管内(in vivo)の細胞実験で、抗ウイルス効果の評価を行っていた。
その結果、ボナックが設計・合成した核酸医薬の候補72種類中、10種類でウイルス増殖に対する抑制効果を確認。さらに10種類のなかから、体内での安定性が高く、少量でも効果が期待できる3種類の候補薬にまで絞り込みを行った。21年3月までに予定していた作業を20年8月前に完了したとして、計画前倒しで進んでいることを発表していた。
上記有効性確認の結果、同社と福岡県らの共同研究による「核酸を用いた新型コロナウイルス感染症治療薬の開発」は、国立研究開発法人「日本医療研究開発機構」(AMED)により20年度・医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE)の実用化開発タイプとして採択された。支援内容は、21年5月以降3年半で50億円の支援を受ける内容となっていた。開発スケジュールとしては、22年度中にヒトでの臨床試験を開始し、25年度の承認申請を目指すとしていた。
支援決定後、開発途上の中間評価で有効性なしの判定
ところが、AMEDによる22年度の中間評価では、同社の今後の研究開発の見込みについて、「in vivo(生体内での)感染モデルにおいて、治療的には抗ウイルス効果をほとんど示さないことが確認された。医薬品としての開発は現状では困難である」との判断を下され、「本課題の継続を不可と評価」されていた。
つまり、福岡県との共同研究段階であった試験管内(in vitro)では有効性が確認されたが、マウスなどの動物を用いた生体内(in vivo)の実験ではほとんど有効性が確認されなかったということになる。
核酸医薬はウイルス感染症に対して大きな効果が期待される次世代医薬。同社が開発していたのは、口から吸い込む吸入薬で、注射薬や経口薬と異なり、血液を介さず肺に直接届くため、薬の成分が全身に回らず副作用の恐れが少ないと期待されていた。
【寺村朋輝】
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