『脊振の自然に魅せられて』「新緑のブナ林を歩く」(前)
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ブナの自生地は北半球の温帯地域とされている。日本列島におけるブナの自生地は、北限は北海道の札幌と函館の中間地点・黒松内町(くろまつないちょう)、南限は九州・鹿児島県大隅半島の高隈山(たかくまやま)である。従って屋久島にはブナはない。
九州では九州山地の五家荘一帯がブナの多いエリアであったが、近年鹿が幹の皮を食べ、立ち枯れとなった惨状を目にする。福岡県では英彦山の北岳付近にブナが自生しているが五箇荘と同じく鹿の被害に遭っている。若い木は金網で守られている。
脊振山系にブナが豊富にあるのはあまり知られていない。そして鹿の被害も受けていない。脊振山(1,055m)の自衛隊基地周辺、金山周辺(967m)、糸島市と佐賀市の境にある雷山(955m)への登山道にある雷神社上宮から上部においてブナの巨木が多くみられる。
そのなかで、金山から脊振山への縦走路の1km辺りが美しいブナの林となっている。5月17日(金)、ブナ林の撮影のためこの一帯を歩いた。福岡市から佐賀市への国道263号の三瀬峠越えの旧道を利用し、佐賀県側の金山脊振林道へ入ると車で10分、距離にして2.5km走ると山中キャンプ場から続く登山口に着く。
この登山口に2008年10月に早良区役所と行った脊振山系道標設置事業で立てた道標がある。設置から16年も経ち、支柱は傷んできたが元気に立っている。筆者は時々、花粉などで汚れたプレートをタワシで磨いている。また、ここにレスキューポイントと日本山岳遺産のプレートも取り付けている。これらの道標は筆者にとって友人のように思える。
登山口から新緑を見ながら登山道を歩くこと1時間で三瀬峠からの縦走路の分岐に着いた。ここから50m、三瀬峠の縦走路に入ると、設置したもう1つの道標がある。
この一帯は湿地帯となって樹木の花や野草が楽しめる場所でもある。会いたかったハイノキはわずかに白い花を残し、オトコヨウゾメは花を散らし、結実の準備をしていた。秋には赤い小さな実をたくさんつける。咲き終わっても楽しめる小ぶりの樹木である。
ここから金山山頂への登山道を登る。距離にして0.5km、時間にして15分の山道であるが、来るたびに太腿を上げ、あえぎながら登る道である。この登山道の2カ所の木の枝に、小型道標のプレートを取り付けている。これらを確認しながら登って行く。小型道標も筆者にとって仲間のようなものだ。
10分ほど歩くと、前方の樹木の間に青空が見えてくる。もう金山の「肩」は近い。肩とは山頂から人の肩のように少し下がった場所である。ここの肩に立てた道標に「こんにちは」と声をかける。古くなった道標に見えるが、登山口に立てた同じ日に設置した道標である。
設置したときの光景が今も頭に浮かぶ。道標設置事業の初日に立てた道標である。この周辺は平らで、樹木の陰となり涼しく休憩できる場所でもある。
ここで、若い登山者が腰を下ろし、昼食をとっていた。1年前までは佐賀藩の番所があった場所跡と大きな木製の登山案内図があったが撤去されていた。新しい1m四方の案内板に取って変わっている。
(つづく)
脊振の自然を愛する会
代表 池田友行関連キーワード
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