2024年08月06日( 火 )

福岡市が6年連続で低漏水率トップ

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福岡市水道局

 2023年3月1日に水道創設100周年を迎えた福岡市。市内全域に約4,100kmの配水管が張りめぐらされているが、福岡市の漏水率は6年連続で全国トップの低さを誇る。福岡市水道局のこれまでの実績に対する要因や今後の取り組みを見てみる。

【水管理センター】
【水管理センター】

大渇水を2度経験した、一級河川のない福岡市

 福岡市は全国の政令指定都市のなかで唯一、市内を一級河川が流れておらず、地理的に水資源に恵まれていない都市だ。1978年の大渇水を教訓として「節水型都市づくり」を推進してきたが、94年には2度目の大渇水を経験。そうしたことから、2003年には全国に先駆けて「節水推進条例」を施行した。“水を大切に使う”節水への協力と理解を市民から得ながら、“限りある水資源の有効かつ合理的な利用”に向けて取り組んできた。市内全域に約4,100kmの配水管が布設されているが、節水を図るためには漏水を防ぐことも重要となる。

6年連続で日本一、低い漏水率

 福岡市では、78年の大渇水の経験から「配水調整システム」を構築した。これは、異なった水源状況への対応などを目的として、浄水場から蛇口までの水の流れや水圧をコントロールするもので、81年から水道局の「水管理センター」で運用を開始。市内各所の配水管に電動弁および水圧計・流量計を設置しており、水管理センターから水圧計や流量計を見ながら遠隔で電動弁を操作している。たとえば、水圧が高くなったときには電動弁を閉め、逆に水圧が下がった場合は電動弁を開けて常時適正な水圧を維持している。そのため、水管理センターでは24時間365日、常に水圧および流量を監視している。

 また、「漏水防止」の対策にも積極的に取り組んでおり、熟練の調査員による漏水調査を計画的に年間約3,000km行っている。調査の結果、漏水しているとわかれば、すぐに修理に移るというものだ。

 最後に、「配水管の整備」。1960年後半から80年ごろに設置した配水管の老朽化が進んでおり、とくに埋立地などの腐食性の高い土壌に埋設し、ポリエチレンスリーブを装着していない配水管を優先的かつ計画的に更新している。これら3つの取り組みなどを進めることで、低い漏水率を実現。22年度の漏水率は全国トップの低さである1.8%を記録。6年連続の日本一で、世界でもトップだ。

AIとIoTで漏水の早期発見へ

 また、漏水調査では、新技術の活用にも取り組んでいる。第1弾は、人工衛星画像を活用した水道管漏水調査「漏水(マクロ)調査」。人工衛星画像やビッグデータをAIで分析し、漏水の可能性が高いところ(漏水リスクエリア)を判定するスクリーニング調査のことで、すでに23年度の実証実験を終え、24年5月から実装している。

 第2弾は、IoTセンサを活用した水道管漏水調査「漏水(ミクロ)調査」。人工衛星画像で判定された漏水リスクが高いエリア内に埋設された水道管に、高感度のIoTセンサを設置し、庁舎など遠隔地に居ながらリアルタイムで定点監視を実施するというもの。人の目や耳による検知は今後も必要だが、センサを用いることで、24時間の監視を可能としている。リスクエリアのほか、とくに交通量の多い幹線道路や鉄道路線の地下などの人の耳での調査が困難なところへの設置も検討されている。24年1月から実証実験がスタートした。

 また、22年度からは、mirai@共働事業「インフラテック実証プロジェクト」にて、埋設した水道管の劣化状況を把握する取り組み「AI技術を活用した管路劣化予測」の研究にも取り組んでいる。道路を掘削することなく劣化予測が可能になったといい、実証実験を経て23年度から実装されている。

福岡市水道局 計画部技術管理課長
宮﨑浩司氏

 福岡市水道局計画部技術管理課長・宮﨑浩司氏は、「配水管の漏水の早期発見と、漏水の予測を組み合わせていけば、より効率的・効果的な『漏水防止システム』が構築できます。我々の使命は、やはり安全で良質な水道水の安定供給です。現在、物価や人件費が高騰していますが、安定経営を維持していけるように、新技術も活用しながら業務の効率化・生産性の向上に努めていきたいと思っています」と話す。

【参考】新技術の活用イメージ
【参考】新技術の活用イメージ

【内山義之】

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