2024年10月10日( 木 )

30周年を迎え、また超えて(14)論評の難しさを痛感

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与信情報の見立ては容易い

福岡空港 イメージ    『九経エコノス』を発刊して以降、広範囲な取材で見通しを立てる経済記事を執筆する機会を得るようになった。それによって刺激を受け、大いに燃えた。しかし、場数を踏まなければ記者としてのスキルアップは望めない。「与信情報」のエキスは企業の“近々の未来”を予測することである。「潰れるのか、潰れないのか」の結論を出せば、役割は完了する。「倒産予測的中!」となればクライアントから評価される。取引予算も増える。

 ところが一般の経済記事では「的確な内容であったね」と褒められることは稀である。もちろん、それだけの素養を築けていないから当然であろう。『九経エコノス』発刊後、地元財界の一部で「福岡に24時間空港の建設を」というキャンペーンが展開され始めた。こちらは安易に「こんな交通の利便性の高い空港を移転させるとは何事か!」と反論記事を書いた。しかし、今となっては赤面の至りである。あまりにも軽薄短小であった己が恥ずかしい。

飛行機が離陸失敗

 自身の愚かさを痛感し、罵倒したくなるような事故が発生した。1996年6月に福岡空港で起きた大変な事故のことである。ガルーダ・インドネシア航空の飛行機が離陸に失敗し、滑走路内で止まりきれずにオーバーランして空港南側の道路を越えてしまったのである。この事故による死者は乗客3名であったが、道路を通行していた車を巻き込んでいたならば、さらなる大惨事になっていたに違いない。

 このニュースを耳にした筆者は、急いで現場に直行した。南側滑走路の終わりにフェンスが張られている。そのフェンスを境に西(金隈)から東(立花寺)へ道路が伸びている。その金網を越えて飛行機が道路に飛び込んでいる光景を目撃して身体の震えが止まらなかった。

 この体験が筆者にとって新たなスタートとなった。「絶対、福岡空港は移転させなといけない」という使命感が沸々と湧いてきたのである。事故現場周辺には住民が数多くおられるから「飛行場を移転すべしという世論が高まるであろう」と見通しを立てたのだが甘かった。

 確かに「埋め立て空港、24時間空港建設」の運動が高まり始めた矢先ではあった。86年、C&C(サークル&シティ)が立ち上げられていた。狙いは、まず博多湾沿いに高速道路をつくることが第一弾。並行して新宮町北部の海を埋め立てて「24時間空港」を建設する。私見としては「海の中道沿いに建設できれば最高なり」と念じていた。「今後、50年間における福岡発展の要になる」と確信したのであるが…。

 概略プランを世に問う行動が活発となっていった。担い手は石村萬盛堂・石村社長、早良区選出・古川県議等々、40代が中核となっていた。「時代の要請の波動をつかみ、実践してかたちにしていく」。そのような使命に基づく、地域活性化の基軸になるようなすばらしい運動に福岡市民はエールを送るべきであった。ところが現実は非情なり。「利便性に富んだ空港をどうして移転させる必要があるか!」という「ボンクラ世論」が先行して現状維持の方針に固まっていった。ただ狭苦しいだけの現在の空港に、儲けのための投資がむやみに行われている。

台湾、韓国のお客さんに感謝

 今年9月29日から10月1日まで、仕事で台湾に行った。29日の夕方5時半の国際線ターミナルは、押し合いへし合いで大混雑していた。「よくまぁ、これだけ多くのの人たちが福岡にお見えになったことだ。主に台湾・韓国からのお客だ。まことにありがとうございます」と素直に感謝することができる。

 10月1日、帰宅するため空港からタクシーを使った。ドライバーさんも「インバウンドのお客さんには本当にお世話になっていますよ。1日平均3組のお客さんを乗せて1組単価は3,000円になりますからね。ありがたいです」と語る。

 待合室の狭さに関して、お客さん方は嫌悪感を抱いておられるが、もう帰途につくから我慢されているのであろう。現在、午後5時以降の韓国への便は仁川行きが9便、釜山行きが2便、大邱行きが1便、清州行きが1便の計13便ある(24年10月1日現在)。誰が、これだけ往来が増えると予期できただろうか(国際線ターミナルの拡大はこれ以上、不可能である)。夕方、待合室にいた人の割合は韓国人7割、台湾人2割、残り1割が日本人であった。台湾・桃園国際空港行きは270人乗りの便だったが、一席も空きがなく満席、日本人の乗客は目分量でせいぜい20人とさらにすくなかったように見える。

国際便はまだまだ急増する

 2030年、6年後の福岡空港の旅客の利用状況を推測してみよう。日本人客は減ることはないが微増というところであろう。だから国内線は現状プラスアルファといったところである。問題は国際便の急増に現在の規模で対応できるかという点である。まずアジア諸国からの往来が韓国・台湾同様に急増するだろう。となれば国際便を1日100便受け入れる覚悟が必要となる。便数の内訳をカウントすることが重要だ。

 1日の便数を大胆に予測する。(1)韓国25便、(2)台湾8便、(3)中国20便、(4)フィリピン5便、(5)香港5便、(6)シンガポール3便、(7)ベトナム5便、(8)タイ3便、(9)インドネシア5便、(10)インド2便、(11)その他19便といったところか。おそらく1日100便まで国際便は増加する。はたして、それだけの便数を現在の福岡国際空港の規模でさばけるのか。さらに危機感を抱かせるのは中途半端な2本目の滑走路である。新滑走路の利用便は国際線離陸用に絞るそうだ。大胆な予言をすれば、飛行場からの離発着の過程で大事故の発生が懸念される。そういう最悪な事態が発生しないと新空港移転という動きにはならない。嘆かわしい限りである。

(つづく)

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