【異色の芸術家・中島氏(5)】ドバイレポート 未知との遭遇~来年の個展に向けて~
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画家・劇団エーテル主宰
中島淳一 氏2017年、18年と続けてニューヨークで個展を開催。しかしながら19年はコロナ禍で中止に追い込まれ、ニューヨークでの活動が頓挫した。やむなくYouTubeで自ら情報発信することを決意。「論語」「孫子の兵法」「ニーチェ」などの講演、一人演劇「沙漠の商人」「ゴッホ」「孔子」、絵画作品の映像などを次々にアップした。すると、海外から一人演劇や絵画作品に関する問い合わせなどが入るようになった。パリでの一人演劇の興行の話は、かなりの段階まですすみ、また絵画に関しても契約直前までいったが、コロナ禍という壁もあり、最終的には双方の折り合いがつかず結実には至らなかった。
ところが、今年の始め、Kから、作品を見たいという中国人がいるので、アトリエに連れて行きたいという電話が入った。きっかけはYouTube「論語」の講演だった。日本語がわかるので興味をもち、その後、絵画の画像を見て驚嘆したのだという。とくにdawn(夜明)シリーズの色彩の織りなす神秘的な世界には比類なき個性があり、世界にひろめる価値があると感じたのだと。「是非プロデュースをさせて欲しい。まずはドバイのギャラリーで個展を」というのである。半信半疑であったが、それから5回ほど彼と会った。ドバイのギャラリーの経営者もアトリエにやってきた。
25年4月頃に個展をという話になったが、その前にドバイ視察をしておくべきだとプロデューサーが言う。おりしも新しいギャラリーのオープニングの展覧会がある。視察するだけでは面白味がないから、作品を出品するように勧められた。早速、縦4~5mの大きな作品5点を送る。
10月13日にドバイに着く。ギャラリーのオーナーが車で空港に迎えにきてくれた。オープニングセレモニーまでの数日間、クルージングをしたり、UAE最大のモスクであるシェイク・ザイード・モスクやアブダビの大統領官邸を見学したりした。またブルジュ・ハリファの展望台からドバイの街を眺め、その桁外れのスケールに目を見張った。
ギャラリーのオープニングセレモニー当日、今回の展覧会は中国を代表する画家の水墨画と書の作品が中心だとわかった。残念ながら、中国人の画家の作品と私の抽象画は噛み合ってはいなかったが、作品そのものに対する評判はよかった。ただ、額装をしていなかったのが災いしたのか、壁にではなく、前衛作品のように天井に横に吊られて展示されていた。プロデューサーは展示方法に不満を洩らしていたが、元来出品者も決まっていたなかで、しかも中国文化をアラブ世界に紹介する目的の展覧会に、日本人の私の大きな作品を5点も展示してくれたのは異例のことである。その度量の大きさには敬服するばかりである。
オープニングセレモニーには100名以上の招待客が集まり、中国を代表する女優や映画俳優のスピーチに皆、魅了されていた。中国とドバイのテレビ局も取材にきており、華やかな宴となった。初日と2日で主な作品は1点数千万円でほぼ完売、小品も360~500万円で20点が売れたとプロデューサーから報告を受けた。購入者は中国人とインド人の富裕層である。
中国人の富裕層の1人が私に言った。「私はアーティストをリスペクトしている。なぜなら、普通の人々が見ることのできない宇宙の真実を表現できるからだ」と。もちろん英語で。5点の作品は来年4月のドバイでの個展まで、常設してくれるという。売れるかどうかはもちろん、作品の質の高さであることはいうまでもない。しかし、その作品を見てもらうための集客ができるかどうか。購買力のある富裕層を抱えているドバイのギャラリーには無限の可能性を感じる。個展で成功し、ドバイにアトリエを購入したいという熱い夢を膨らませながら、帰路に着く。
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