イタンジ創業者が新事業、ボリュームチェックを最短1分で
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不動産テックで聖域に挑む
トグルホールディングス(株)(東京都千代田区)子会社のつくるAI(株)(同所)が、新サービス「つくるAI VCライト」および「つくるAI VCプロ」を9月にリリースした。
いずれも、クラウドでブラウザ利用ができる業界初のボリュームチェックサービスだ。不動産開発において、「この土地にはどのくらいの規模の建物が建設可能か」を測るボリュームチェックは欠かせない業務となっている。
ボリュームチェックには、敷地の形状や前面道路の状況、日影規制、天空率などさまざまな前提条件が絡んでくる。ボリュームチェックを行う設計会社においては、専門性が高く作成に時間を要するにも関わらず、「営業活動の一環」であることが多く、負担が重かった。不動産会社にとっても、「フィーを払っている業務でもないし…」と急かすわけにもいかず、設計会社にとっても「本業の実施設計が立て込んでいて…」と優先されるものではないのが実情だろう。こういったことから、スピード勝負の不動産仕入れにおいて、土地の買付が遅れてしまうという課題がデベロッパーを長年悩ませていた。
実際に買付を出すまでには、本格的にプランを検討できる設計会社による詳細なボリュームチェックが入るが、その前段階の「候補となるか否か」をスピーディーに確認できるというのが、「つくるAI VCライト」および「つくるAI VCプロ」だという。
イタンジ創業者による新たなスタートアップ
トグルホールディングスは、伊藤嘉盛氏が2020年に創業した不動産テックベンチャーだ。伊藤嘉盛氏は、物件掲載や内見予約など管理会社向けクラウドシステム「ITANDI BB」などを手がけるイタンジ(株)(東京都港区)の創業者として知られる。なお、イタンジは18年に(株)GA technologies(東証グロース)が子会社化している。
つくるAIの代表取締役・久森達郎氏は、「当社グループの強みは、不動産会社とテック会社で構成されているところにあります」と話す。従業員も、エンジニアが半数を占めているのだという。
不動産テックサービスは、不動産会社またはIT企業による2パターンが一般的だ。前者はエンジニアなどテクノロジー人材への投資が少ないことに起因するプロダクトの不完全さ、後者は投下資本の少なさ、不動産業に対する解像度の低さなどから、いずれも不発となるケースが少なくなかった。そのなかでイタンジは、「不動産仲介の業界慣習に則した、かゆいところに手が届く」SaaSとして、業界に広く普及していった。このイタンジの創業者である伊藤嘉盛氏が、不動産開発の業界慣習に則したSaaSとして新たに開発したのが、「つくるAI VCライト」および「つくるAI VCプロ」だ。
ボリュームチェック 3つのサービス
つくるAIのサービスは、今年6月にリリース済みの「つくるAI 物件管理」と、今回リリースされた「つくるAI VC ライト」および「つくるAI VCプロ」の3つで構成されている。
「つくるAI 物件管理」は、物件概要書があればそれをデータベース化でき、類似物件の相場賃料調査などをAIで自動作成することができるほか、路線価や公示地価、ストリートビューの表示も可能。案件検討をワンストップで完了できる。オプションでボリュームチェックも可能だ。
「つくるAI VCライト」は、現在の対応エリアは東京23区内に限られるものの、公図から土地を選択するだけで、自動で道路の幅員や都市計画情報が入力され、最短1分で逆日影も考慮した消化容積を算出することができる。
「つくるAI VCプロ」は、VCライトの機能に加え、対応エリア(23区)外でも、測量図などをアップロードすることで、測量図の座標を自動読み取りに加え、ボリュームチェックを行うことができる。3つのサービスのいずれも、ブラウザ上で完結できる点が特徴だ。
「つくるAI 物件管理」および「つくるAI VCライト」は月額1.5万円から、「つくるAI VCプロ」は月額3万円からという価格設定となっている。
VCプロ&物件管理は福岡市でも使用可能
では、ボリュームチェックの精度についてはどうだろう。つくるAI・取締役で販売責任者の新家隆介氏は、「まず、VCライトと物件管理のVC機能では、日影規制を逆算し、規制内に収まった固めのボリュームが算出されるようにしております。半年以内には、道路斜線の緩和の1つである天空率の実装も検討しているところです。自治体ごとの条例による緩和への対応も、順次実装をしてまいります。月に数十件や数百件のボリュームチェックを外部に依頼している場合、その何割かを当社のサービスで代替すれば、業務効率は大きく改善していくはず」と強調する。
最終的な判断には、詳細な要件を加味したボリュームチェックが必要となるものの、規制により容積を消化できない物件などは検討から外すことができるため、外注するボリュームチェック数は減るのだという。「つくるAI VCプロ」の開発責任者・金康龍氏は、「設計会社においても、実施設計に集中できるようになるため、業務効率改善に貢献できるはず」と加える。
久森氏は、「つくるAI VCライト」が東京23区内に限られることについて、「エリアの拡大はもちろん検討しています。市場が大きな自治体への拡大を進めていきますが、グループ会社で不動産事業を手がけるフジケン(株)が福岡支店の開設を予定していることもあり、福岡の優先順位は高い」と話した。
公図から土地を選択するだけでボリュームチェックできる「つくるAI VCライト」の対象エリアとなる時期も遠くないはずだ。
【永上隼人】
<COMPANY INFORMATION>
トグルホールディングス(株)
代 表:伊藤嘉盛
所在地:東京都千代田区平河町2-7-3
PMO平河町2階
設 立:2020年6月
資本金:27億5,871万円(資本剰余金含む)
売上高:(23/9連結)51億円
URL:https://toggle.co.jp/つくるAI(株)
代 表:久森達郎
所在地:東京都千代田区平河町2-7-3
PMO平河町2階
(トグルホールディングス内)
設 立:2024年7月
資本金:500万円
URL: https://tsukuru.ai/月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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