共創の力で社会を変えるソーシャルビジネスの可能性(前)
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(株)ボーダレス・ジャパン
代表取締役副社長 鈴木雅剛 氏社会課題の解決に向けた取り組みを志す人が増えている。しかし、ビジネスとして成立させることは難しいとの認識が、立ち上がろうとする人を躊躇させているのかもしれない。だが、起業家同士が支え合う仕組みがあれば自ずと賛同する仲間も増えていく。共創の力で社会を変えるソーシャルビジネスとその仕組みについて、(株)ボーダレス・ジャパン 代表取締役副社長・鈴木雅剛氏に話を聞いた。
社会課題の解決を志した理由
──創業のきっかけを教えてください。
鈴木雅剛氏(以下、鈴木) ボーダレス・ジャパンは代表の田口と2007年に創業しました。田口とは前職の内定者同士として知り合ったのですが、互いに学生のときから起業について考えていました。田口は学生時代にテレビでアフリカの栄養失調に苦しむ子どもたちの現状を見て、将来は貧困をなくすために人生を懸けようと決めました。私も、学生ながら電車に乗れば疲れ切ったサラリーマンの姿を目にすることに疑問をもっていました。世の中を良くするために協力する必要があるのに、なぜ仕事を苦しいと感じてしまうのか。将来は、働くことに意味をもてる仕事を自分でつくりたいと考えていました。それぞれが目指す社会を実現するためにも一緒にやったほうが間違いなくスピードが上がると確信し、共に起業することを決めました。
実際に起業したのは、(株)ミスミに就職してから2年が経った時でした。資金と経験を積んで会社を興したものの、当初は何から始めようと考えるところからのスタートでした。最初に取り組んだのは、普通のビジネスとして不動産仲介業をやりながら営業利益の1%を社会課題の解決に取り組むNPOやNGOに寄付することでした。活動費が不足しているという彼らにお金を届けられる仕組みをつくったのです。初回の決算で売上高は700万円、そのうち7万円を寄付しました。
しかし、疑問が残りました。なぜ自分たちは起業したのかと。日々の仕事が直接的な社会課題の解決につながっていないことに気づき、ビジネスというソリューションを使って社会課題の解決に取り組むため、家を借りることができない外国人のためにボーダレスハウスというシェアハウス事業へとピボットしました。日本人も外国人と一緒に住んで共同生活をすると、人間同士のつながりができます。彼らの姿を見て、地球上のさまざまな地域で起きている社会課題を世界中の人と協力して解決したいという気持ちがなおさら強くなりました。
ソーシャルビジネスと起業家の立ち上げ支援まで
鈴木 次に取り組んだのが、貧困問題を解決するためのソーシャルビジネスです。ミャンマーの小規模な貧困農家と協力してハーブを栽培し、それを適正な価格で買い取り、女性向けのオーガニックハーブティとして販売しています。ほかにも、バングラデシュでも革製品の事業「ビジネスレザーファクトリー」を立ち上げました。革製品の製造工場を現地に設立し、シングルマザーや障がいのある方を雇用しています。現在の雇用数は約900人。貧困問題に苦しんでいた人が、安定して生活できる収入が得られることを目的としたビジネスは今も雇用数をソーシャルインパクトに置き拡大しています。
しかし、自分たちだけで頑張っても解決できる問題には限りがあります。そこで、自分たちと同じように社会課題の解決に取り組みたい人が起業できる仕組みをつくることにしました。それが、芸能養成所を参考につくったボーダレスアカデミーです。
2015年の開始以来、約300名の受講生が卒業し、うち110名が起業しています。他にも、社会起業家のエコシステムを構築しています。社会課題を解決したいと思う社会起業家が集い、資金面での支援、ノウハウ共有などを行っています。ソーシャルビジネスには、普通のビジネスとは異なる難しさがあります。経済合理性が成り立ちにくいという特性から、通常のビジネスの対象にならず取り残されていることが大半です。挑戦しがいのある領域で孤軍奮闘している起業家にこそ、たくさんの仲間が必要です。そのために、私たちは社会起業家のプラットフォーム「ボーダレス・カンパニオ」をつくっています。
インパクトを最大化するボーダレス・カンパニオ
──カンパニオとは何ですか。
鈴木 カンパニオとは、さまざまな領域で社会課題の解決に挑戦する起業家が起業や経営に必要な資金やノウハウを共有し合う社会起業家コミュニティのことを指します。カンパニオとは、会社や仲間を表す英語「カンパニー」の語源で、「パンを分け合う仲間」という意味から名付けています。
カンパニオでは、さまざまな仕組みを提供しています。たとえば、創業するためのお金。利益の10%を各社が拠出し合い、新しい仲間の創業資金として寄付のかたちで提供しています。寄付を受けた起業家は、創業後に利益の10%を拠出する側にまわり、次の起業家の挑戦を支えていく「恩送り」の資金循環で社会起業家の誕生を支えています。
ほかにも、諸先輩たちが得たノウハウやつながりを仲間同士で共有する仕組みがあります。マーケティングやファイナンス、セールスなど単独では実現できない知識・経験を分かち合うことで事業成長を後押しします。
(つづく)
【寺村朋輝】
<プロフィール>
鈴木雅剛(すずき・まさよし)
1979年生まれ、広島県出身。(株)ミスミ(現・ミスミグループ本社)を経て、ボーダレス・ジャパンを共同創業。事業創出、ファイナンスなどコーポレート部門、社会起業家のインキュベート、アクセラなど、数々のソーシャルビジネスの創出、成長に従事。また、社会起業家が集い、ノウハウ、資金等関係資産を共有し、ソーシャルインパクトを共創する共同体「ボーダレスカンパニオ」の仕組みづくりを追究。丸井グループサステナビリティアドバイザーや環境省事業委員就任など、企業や行政、教育機関とノウハウ/ネットワークを共有、協働を進め、インパクト最大化を推し進めている。法人名
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