2025年01月21日( 火 )

第二次トランプ政権で世界はどのように変わるのか(1)

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鹿児島大学名誉教授
ISF独立言論フォーラム編集長
木村朗

 NetIB-NEWSでは、ISF独立言論フォーラムのISF通信を掲載している。
 今回のISF通信では、1月20日に正式発足するトランプ政権がどのようにアメリカと世界を変えようとしているのかを検討している。

1.第二次トランプ政権で予想される
  主要閣僚・スタッフの顔ぶれ

 昨年11月5日の大統領選挙で勝利したドナルド・トランプ前大統領は、すでに副大統領に選出されているJ・D・ヴァンス氏(オハイオ州選出の上院議員)や大統領選でトランプ陣営の選対本部長を務めたスーザン・ワイルズ大統領首席補佐官の他に、次期政権の主要な閣僚人事を相次いで発表している。

 トランプ氏は新設される政府効率化省(DOGE)のトップにイーロン・マスク氏を指名した。そのマスク氏は規制緩和や政府機関の支出削減を主導することにある。すでにバイデン政権が提出した国家予算案を10分の1に削減するなどの結果をもたらしているのは注目に値する。

 またトランプ氏は大統領選に無所属で出馬したがその後にトランプ氏支持に回ったロバート・F・ケネディJr.氏(70)を保健福祉省のトップに指名した。ケネディ氏はワクチンに懐疑的で、科学者らが誤りだと指摘する健康情報を広めてきたことで知られる。

 第1次政権でトランプ氏が弾劾訴追された際に弁護団の一員を務めたパム・ボンディ氏は司法長官に指名された。当初、司法長官候補にはマット・ゲーツ元下院議員が指名されたが、未成年の女性との性交渉疑惑が問題化して辞退していた。

 国務長官には、フロリダ州選出の上院議員のマルコ・ルビオ氏を指名した。ウクライナ支援には懐疑的で中国、イラン、ベネズエラに対する強硬派として知られる。

 国防長官には、FOXニュースの司会者であったピート・ヘグセス氏を指名した。FOXでは司会者を8年間務め、保守的な言動で知られる。陸軍時代にはイラクやアフガニスタンに派遣されたが、軍や国家安全保障分野の上級職に就いた経験はない。

 大統領補佐官(国家安全保障担当)にフロリダ州選出の下院議員であるマイケル・ウォルツ氏を指名。陸軍の特殊部隊「グリーンベレー」出身で、アフガニスタンなどで従軍。バイデン政権のウクライナ支援を批判し、対中強硬派でもある。

 中央情報局(CIA)長官には、テキサス州選出の元下院議員で、第1次トランプ政権では2020~21年に国家情報長官を務めたジョン・ラトクリフ氏を指名した。トランプ氏が弾劾訴追された時もトランプ氏を強く擁護したが、米政府の2つの情報機関トップを務めることになる。

 トランプ氏は大統領次席補佐官にトランプ政権1期目でスピーチライターを務めたスティーブン・ミラー氏を起用した。移民政策を担当させるとみられている。

 経済分野では、著名投資家のスコット・ベッセント氏を財務長官に指名したほか、商務長官には米投資銀行CEOのハワード・ラトニック氏を指名。ウォール街からの相次ぐ経済閣僚の登用はトランプ氏の市場との対話を重視する姿勢を示すものである。

 その他に、国連大使にエリス・ステファニク連邦下院議員(ニューヨーク州)を、環境保護庁(EPA)の長官にリー・ゼルディン元下院議員(ニューヨーク州)、大統領補佐官(安全保障担当)にマイケル・ウォルツ下院議員(フロリダ州)を、国土安全保障省(DHS)長官にサウスダコタ州のクリスティ・ノーム知事を指名している。

 トランプ氏は今年1月6日に連邦議会上下合同会議で正式に次期大統領として承認されている。また昨年の大統領選挙では上院で共和党が過半の53議席を獲得しており、閣僚などの人事は、今年1月3日から始まった第119議会の上院で順次承認される手続きが始まっている。

(つづく)

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