2025年01月31日( 金 )

野党の賛成多数で安倍派会計責任者招致決まる~少数与党の悲哀

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    24日から始まった通常国会も「政治とカネ」の問題をめぐり、揺れている。30日、衆議院予算委員会は、自民党・旧安倍派の会計責任者の参考人招致を野党の賛成多数で決定した。自民党は最後まで抵抗したが、立憲民主党などの賛成多数で議決となり、公明党は賛成も検討したが、最終的には退席した。 

多数決で参考人招致が決まる

 国会における答弁は通常、閣僚や副大臣・政務官の政務3役や官僚が行っている。これとは別に、民間の有識者や問題の当事者を国会に呼んで意見を聞くことができるのが参考人招致である。

 国会における参考人招致は全会一致で議決するのが慣例となってきた。多数決で招致が決まったのは1974年以来、51年ぶりとなる。予算委員会の委員長を立憲の安住淳氏が務めていることと、野党が多数を占めていることが今回の議決につながった。委員会終了後、安住委員長は「(会計責任者には)議決の重みを十分に自覚し、参考人招致が行えるようご決断願いたい」と述べた。ただ、議決に強制力はなく、会計責任者は応じない意向であるという。 

 旧安倍派の会計責任者は昨年10月に政治資金規正法違反(虚偽記載)で禁錮3年、執行猶予5年の有罪判決が確定した。パーティー券収入のノルマ超過分のキックバックについて、裁判で「一度中止が決まった後、幹部議員が復活要求し再開された」と証言していた。 

 昨年から行われている政治倫理審査会(政倫審)において、複数の議員から政治資金収支報告書の不記載は、派閥事務局からの指示に基づいたものとの証言があった。これまでの政倫審でも「いつから裏金づくりが行われるようになったのか」など重要な点は明らかにされていない。

 自民と連立を組む公明は、「政治とカネ」に対して厳しい姿勢をとろうとしてもとることができない板挟みの状態に置かれている。斉藤鉄夫代表など公明幹部は27日に対応を協議。党内で参考人招致に賛成すべきだという意見が強く、自民に対し招致に賛成する可能性を伝えた。それに自民側が反発したため、公明は退席というかたちで、矛を収めるかたちとなった。自民への配慮であろう。 

 自民・公明は「多数決で民間人を呼び出すのは厳に慎むべき」としたが、自公の足並みがそろわなかったことから、今後の政権運営においても影響が出るとの見方がある。 

野党への配慮と自民分裂の危機

 今回の参考人招致をめぐって、与野党間の綱引きが続き、予算審議の日程にも遅れが生じた。与党は30日から次年度の予算案審議に入りたかったが、参考人招致をめぐって与野党間でまとまらなかった。自民・立憲の国対委員長間の協議ももたれたが、全会一致とはならなかった。 

 「政治とカネ」ばかりではなく選択的夫婦別姓など、自公間の隔たりが大きく、自民にとっては党の分裂にもなりかねない案件が控えている。夫婦別姓は野党だけでなく自民内にも賛成派がおり、公明は明確に賛成している。 

 政府提出法案ではなくとも、野党が法案を出した場合、数の論理では賛成多数で可決することが可能だ。その場合、反対・慎重派の自民保守系がどのような動きをするかも注目されている。なお、党内保守派は安倍派に多い傾向がある。石破茂首相は従来、別姓賛成派であったが、党内保守派への配慮を怠れば党内が割れ、支持基盤も失う恐れがある。 

 自公が少数与党の状況下、年度内の予算案成立に野党の協力は不可欠である。昨年の衆院選以降、国民民主党や日本維新の会に配慮する動きをみせており、異例だが予算案を修正する方向にあるという。予算を年度内に成立させるには、3月上旬までの衆議院通過が必要で、修正の手続きには1週間から2週間程度を要する。
 国民の玉木雄一郎代表は「103万円の壁」の引き上げに関し「123万のままなら予算案に反対する」と述べるなど、野党側が納得する内容となるかは不透明だ。与党は予算案をめぐり綱渡りの国会運営を強いられ、自公間の足並みが揃わず、自民党内が割れるとなれば、夏の参院選は厳しいものとなる可能性がある。

【近藤将勝】

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