【異色の芸術家・中島氏(17)】福岡アジア美術館・中島淳一展を振り返る。

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 絵画、一人演劇と1つの分野にとどまらず活動し、ニューヨークに加えドバイへも活躍の場を広げようとしている異色の芸術家・中島淳一氏。福岡アジア美術館での2回目となる個展「夜明・ラプソディシリーズ」が13日から18日まで開催され、約1,000名が来場し、大型の新作などの作品群を鑑賞した。その中島氏に今回の個展を振り返ってもらった。

 昨年7月、企画ギャラリーの5mという天井の高さに魅せられて、最初の個展を開催した。130号(縦194cm×横162cm)の作品を中心に展示したが、美術館の空間にはもっとサイズの大きい作品が必要だと感じた。しかし、アトリエのエレベーターには130号までしか入らない。どうしたらいいのか、10mのキャンバスを床に広げて展示する方法もあるが、私のコンセプトに合わない。悶々としていると不意に、縦4、5mの布地に描き、掛け軸のように吊るすことを思いついた。早速布地を入手して描いてみたが、なかなか手強い。絵具を塗り重ねる度に布に皺が寄るので描きづらく、完成までに時間がかかるのだ。おまけに今のアトリエでは4mの布地を広げて描くスペースはない。アトリエに絶対に必要なものは、より高い壁と長いテーブルだと思い知らされる。やむなく布地を巻きながら描く。毎日14時間、時には夜を徹し、寝る間も惜しんで布地と格闘。半年で4mの大作、26点が完成した。展示作品は65点。

 東京や大阪など遠方からきてくださった方もおり、数十年ぶりの懐かしい再会もあった。旅行中のフランス人やベルギー人、アメリカ人、中国人、韓国人などが熱心に作品を鑑賞する姿もあった。来場者の反応はさまざまだった。手法についての質問も多かった。感想の表現はそれぞれ個性的で興味深いものがあった。「圧巻だ」「圧倒された」という人もいれば「色彩が悪魔のように繊細で天使のように大胆」「凄まじいエネルギーに身体が熱くなり、癒された」という人もいた。また、ある人からは「狂気だ」という画家にとっては最高の褒め言葉もいただく。

 私自身はというと、高さ5mの壁に対する縦400cm×横幅140cmの布地の作品はイメージ通りで、海外のギャラリーでの展示の参考にはなったが、横幅は160cmくらいある方がより迫力が出ると思った。画家の制作意欲は歳を重ねるほど強くなるとニューヨークではよく耳にしたが、私自身も70歳を過ぎたころから自覚するようになった。今も創作意欲の炎が身体の芯でめらめらと燃えている。

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