健口から健康へ(1)「ぽかん⼝」にご注意! 舌回しで始める健⼝からの健康づくり
オーラルフレイルを防ぎ、全身の健康と美容を守る“舌の力”活用法
健康的な生活を送るための入り口はどこでしょうか?実は、それは「健⼝」にあります。⼝腔ケアを疎かにすると、病気が全身に広がるリスクが高まります。近年ではとくに、⼝が開いたままで閉じられない、いわゆる「ぽかん⼝」の人が増えており、その背景にはマスク生活の影響も指摘されています。このような口腔機能の低下が、全身の健康にどのような影響をおよぼすのかを見ていきましょう。
⾆の力が健康を左右する
⾆は「動く内臓」ともいえるほど重要な役割をはたす器官です。その1つが、⼝を閉じる筋⾁を支えること。⾆の力(⾆圧)が弱いと⼝が閉じにくくなり、本来の⿐呼吸ができなくなります。⼝呼吸になると、ウイルスや細菌が直接気管や肺に入りやすくなり、感染症のリスクが高まります。また、⾆圧は握⼒と比例しており、体⼒や脳の血流の働きとも深い関係があり、認知症予防にもなります。
たとえば、階段を5階まで登るとき、⼝が開いて⼝呼吸の状態になると、⾆が下がり酸素の供給が遅くなるため、全身の回復に時間がかかります。⾆の健康は、全身の健康のバロメーターともいえるのです。
唾液で⼝腔環境を整える
⾆のもう1つの重要な役割は、唾液の分泌を促すことです。唾液には⾍⻭や⻭周病のリスクを減らし、⼝腔内の環境を保つ働きがあります。さらに、唾液は保湿効果をもち、粘膜や肌の新陳代謝を促進することで、肌の健康にも寄与します。
⾆の運動を習慣化することで、⼝腔機能を維持し、オーラルフレイル(⼝腔機能の低下)を防ぐことができます。これにより、全身の健康を守るだけでなく、美容面でも大きな効果が期待できます。
今すぐ始める⾆回し習慣
では、具体的な方法を見てみましょう。今回ご紹介するのは、「⾆回し」という簡単なトレーニングです。
1. ⾆回しのやり方
⼝を閉じた状態で、⾆を時計回り、反時計回りにゆっくり⼤きな円を描くように動かします。2〜3回繰り返すと、唾液が出てくるのを感じられるでしょう。
2. 1⽇10回を目標
1⽇に最低でも10回程度続けることで、⾆の筋⼒が徐々に鍛えられます。簡単でありながら、その効果は絶大です。
健⼝から始める健康生活
⾆回しは誰でも気軽に始められる健康習慣です。この小さな一歩が、全身の健康を守り、美容や生活の質の向上にもつながります。⾆はただの味覚器官ではなく、全身の健康を支える重要なパートナーです。
さあ、今日から「⾆回し」を始めてみましょう。健⼝から健康への第一歩を踏み出すのは、今この瞬間です!
歯科医師 大村豊(おおむら・ゆたか)
1964年3月23日福岡県柳川市生まれ。福岡歯科大学卒業後、大学院で舌の発生学を研究。2002年10月に福岡市百道浜で大村歯科クリニックを開業し、予防歯学を重視した診療を展開。オーラルフレイルに早期から着目し、独自の口腔機能向上プログラムを通じて患者の生活の質向上を図る。現在も「口の健康が全身を支える」という信念のもと、研究と臨床の両面から口腔ケアの重要性を訴え続けている。