失格へ誘導? 設計プロポーザルで松浦市が偽装工作?(前)
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長崎県松浦市の国民宿舎の建て替え工事における設計プロポーザル(09年2月~4月)で、落選した設計JVの建築設計士が、市に損害賠償を求める訴訟を起こした。結果は、福岡地裁、福岡高裁ともに、原告である設計士側の勝訴。市職員の誤った説明が審査に影響したという原告の主張が認められる形となったが、一体、どのような内容なのか――。
国民宿舎「つばき荘」問題福島の温泉付き宿泊施設
国民宿舎「つばき荘」
「つばき荘」とは、玄海国定公園の区域に含まれる長崎県北部・伊万里湾の福島町(松浦市)に立地する国民宿舎である。1969(昭和44)年に完成し、当時は、周辺に施設が十分でなかったことから、冠婚葬祭を目的に、多くの地元客が利用していたと言われている。老朽化により、2008年頃から建て替えが検討され始め、11年6月30日に新たな建物に建て替えられた新「つばき荘」がオープンした。施設を運営するのは、指定管理者の(株)つばき荘。長崎県松浦市によると、14年度は約5,500人が宿泊し、温泉施設の利用者は約1万3,600人。周辺に宿泊施設などが増えていることから、とくに宿泊者で減少が見られるという。新「つばき荘」の設計をめぐる問題が起きたのは09年のことである。
裁判関連書類によると、国民宿舎「つばき荘」建て替え工事の指名型プロポーザル方式による公募審査が09年の2月から4月にかけて行われた。審査は、プレゼンテーションとヒアリングを行い、1段階審査で最優秀者を選定するというもの。08年12月25日に実施要領が配布され、翌年の2月18日までに、設計JV2者が参加表明。それぞれ新「つばき荘」の基本的な考え方、具体的イメージ、建設・維持管理に係るコストの考え方、規模算定の根拠となる市場調査、独自提案などを記した技術提案書を提出した。市は2月27日と3月5日に審査委員会を実施。4月3日に審査結果を発表(プレゼンとヒアリングは実施されず)した。
偽装工作による誘導?
審査委員会の内容を明らかにしたのは、民間審査委員の内部告発であった。
技術提案書をもとに審査が行われた。選定されなかったA建築設計事務所(以下、A)を代表とする設計JVの提案について、市職員(以下、B)が審査委員に対して、「長崎県に確認した結果、自然公園法で許可されないとの回答が得られた」といった説明を行ったという。さらにAの提案書の評価について、業務実施の方針、提案の的確性、事業費の妥当性の3点について「ゼロと評価すべき」との旨を審査委員会で述べていた。そして、Aは失格とされた。
市に損害賠償を求める訴訟を起こしたのはA建築設計事務所の代表である。原告側は、技術提案書を設計案と見立て、関係法令の適合性に関する審査を行ったことについても問題性を指摘。また、審査委員会が、副市長と課長級職員の4名に、松浦市と福島町の観光協会長、旧つばき荘支配人の民間3名を加えた7名という市関係者が過半数を超える構成であり、審査委員には建築関連法に詳しい外部有識者が含まれていなかった。(つづく)
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