絵画が生み出すエモーショナルバリュー(感動価値)で社会貢献
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(有)ピーアンドピー 代表取締役会長 真田 彬 氏
今、目の前に一冊の画集がある。「真田彬作品集」―九州全域の経済界に影響を与えるグラフィックデザイナーとして数々の受賞、実績を上げてきた(有)ピーアンドピー代表取締役会長、真田彬氏の画集だ。表題の横には「THE DRAWING OF AKIRA SANADA」の一文が添えられている。
ページを開けば、生命力に満ちた素描を彩る水彩画の数々が目に飛び込んできた。初対面時に「私は、本当は画家なんですよ」と自己紹介されたことを思い出した。聞けば、祖父の代から腕利きの画家の家系だそうだ。九州画工の草分けである祖父と父、二代にわたって師事した後、デザインの道を選んだのは、戦後の日本で、絵筆を用いて食べていくためのひとつのスタイルだったからだ。
19歳で東京・パルテノンスタジオに入社し7年間実務を経験、1967年福岡でデザインルームP&Pを設立した。
当時、まだ広告代理店などもなく、企業経営者と直接商談、直接受注という形で販路を広げていった。直接商談、直接受注の良さは、取引に信頼関係という名の付加価値がつくところだ。真田氏も、信頼されて商品企画からパッケージ・ブランディングデザインなどを任されるなど、経営にも深く関わることになった。難易度が高い日本宣伝美術会で入選し、そこから活躍の場も大きく広がった。これまで手掛けた作品は熊本銘菓の陣太鼓、長崎県のハウステンボスにおける商品開発やたらみのゼリー、大分県大山市の村おこしなど枚挙に暇がない。グラフィックデザインを通して社会とコミュニケートし経済界に貢献した。福岡ホストライオンズクラブに所属し、過去副会長、会長を務めた真田氏は、今年、同クラブ60周年記念時にシンボルマークも手掛けた。その他の所属団体などにもデザインを提供するなど、デザインを通じた社会貢献も盛んに行っている。
絵画への想いも尽きることはない。プライベートな旅の途中でも居酒屋でも、魅力的なものが目に留まれば自然と絵筆が動いた。絵の具が手元にないときは、身近にあるものを代用した。金沢で食べたホタルイカの生き造りの絵は醤油で着彩したものだ。それぐらい、絵を描くときは無心になれた。何を描くにしても、生命力を感じられるように描くのが信条だ。無人の風景にも人影でアクセントをつけるなど、ちょっとした工夫で絵画に生命(いのち)を込めた。風景、草花、動物、素材は選ばないが、魚を描くとことさら評判がいい。線に勢いがあり、着彩が鮮やかで生き生きとしている。
福岡ホストライオンズクラブ60周年記念シンボルマーク
今やアートの世界もデジタル化され、絵の下書きから完成までPC上で創作することも可能となった。だが真田氏は、「いくらデジタル技術が進もうと原点が人の五感を通して生み出された感性にあることには変わりがない」と語る。デザイン事務所のスタッフにも肉筆の技術指導を徹底して教育してきた。人の力がなければ、アートもデザインも生まれない。その思いが「真田彬作品集」にはいっぱい詰まっている。これまでに何度か水彩画展示会も行った。事務所の一階には新たな事務室を設け、画集に載せた絵画を額に入れて並べている。事務所を任せられるスタッフも育てた今、これからはさらに、絵画の世界の発信にも力を入れていくつもりだ。
料理が趣味で、時折料理の会を催すほどの腕前だがその際はお品書きにも水彩画を添える。真田彬氏の作品は、絵画とデザインが人々とのコミュニケーションを豊かにし、世の中にエモーショナルバリュー(感動価値)を与えることで社会貢献する可能性を示している。
【黒岩 理恵子】<OFFICE INFORMATION>
(有)ピーアンドピー
代 表:原 明彦
所在地:福岡市南区那の川1-13-6
TEL:092-534-5777
FAX:092-534-5778関連記事
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