高島福岡市長、「排外主義」に懸念表明 「自治体への丸投げ」に国への苦言も

 20日に投開票が行われた参院選で「外国人政策」が争点となり、排外主義的な主張が広がったことについて、福岡市の高島宗一郎市長は23日の会見で見解を問われ、「選挙中のデマ、虚偽はあってはならない」「差別主義や国籍によって判断することはよくない」との認識を示した。

 一方で「福岡市議会でも質問が増えているが、円安によるインバウンド客の増加や、マンションなどの価格上昇などで市民から不安の声がある」と述べ、「これは排外主義というよりも、住民の困りごとの声ではないか」と語った。

 また、在留外国人や外国人労働者について「日本というのは共生施策が本当にないに等しい。移民政策を取らないと言っていながら、実際には研修生などのかたちで、どんどん海外の方が入ってきている」との現状を説明。「移民政策を取らないという建前を取っているから、所管の省庁というものがないようなもの」「入ってきた外国人と地元住民がうまく暮らしていくための取り組みを、自治体やNPOに丸投げしているのが実態」と政府の対応の不十分さを指摘した。

 高島市長の会見での発言を補足しておきたい。安倍政権下の2019年4月に施行された改正出入国管理法で単純労働分野での就労を可能にする「特定技能」の在留資格が創設され、14の特定産業分野で外国人労働者の雇用が拡大された。当時の菅義偉官房長官は、介護や建設・宿泊業などの要望を受け、自民党や政府内の慎重論を抑えて受け入れにかじを切った。

 福岡市は、国から国家戦略特区の指定を受け、「福岡市グローバル創業・雇用創出特区」として、積極的な外国人起業家の支援などに取り組んでおり、政府広報オンラインでも「外国人を歓迎する街」として広報活動が行われている。

 人口減少が続く日本が成長を維持するため、政府は観光立国や海外からの人材受け入れを進めてきた。排外主義的な風潮が強まることは、国際社会からの日本の信用を失うことになりかねない。

【近藤将勝】

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